水中を上昇する気泡に関する謎を解明――ルネサンス時代のスケッチにも描かれた不安定な気泡上昇運動の仕組み

CREDIT: UNIVERSIDAD DE SEVILLA

水中を上昇する気泡の不安定な運動を説明するメカニズムが発見された。スペインのセビリア大学と英ブリストル大学の研究によるもので、詳細は2023年1月17日付で『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に掲載された。

水中を上昇する気泡が、ある臨界サイズ以上になると直線的で安定した経路から外れて、周期的にジグザグ運動やらせん状の運動をすることは、ルネサンス時代にも記録されており、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いたスケッチが残っている。しかし、この現象についての定量的な説明や、周期的な運動を説明する物理学的メカニズムはこれまで見つかっていなかった。

今回の研究では、気泡の気水界面の特性を正確に示す数値離散化技術を開発したことで、気泡の運動をシミュレートして安定性を調べることが可能になった。

このシミュレーションは、不安定な気泡運動の高精度な測定結果とかなり一致しており、気泡の球形半径が0.926mmを超えると、気泡は水中で直線軌道から外れることを示した。この結果は、1990年代に超純水で得られた実験値の2%以内となっている。

気泡の軌道が不安定になるメカニズムについて、研究チームは、気泡が周期的に傾くことで気泡の曲率が変化し、その結果、上昇速度に影響を及ぼして軌道がぐらつき、曲率が増大した気泡の側面が上に傾くと提唱している。その結果、流体の移動速度がより速くなり、高曲率の面の周囲で流体圧力が下がると、圧力の不均衡によって気泡が元の位置に戻り、周期的なサイクルが再開される。

従来は、気泡の後流が不安定になると考えられていたが、今回の研究によって、液体の流れと気泡の変形との間の相互作用に基づく新しいメカニズムが実証できた。

研究チームによると、この成果は、固体と気体の中間の挙動をする粒子の動きを理解しやすくする可能性があるという。

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