月の撮影も可能――天体望遠鏡サイズの平面メタレンズ作製に成功

/Credit: Xingjie Ni. All Rights Reserved.

ペンシルベニア州立大学の研究チームが、パンケーキサイズの平面状メタレンズを作製し、これを組込んだコンパクトな望遠鏡を構築することに初めて成功した。深紫外線(DUV)フォトリソグラフィーを用いることで、人工的に光学特性を制御したメタレンズの口径を80mmまで拡大する手法を考案したものであり、地球科学や惑星観測、天体物理学などの分野で、大きな光学系が必要となる望遠鏡システムに活用できると期待している。研究成果が、2022年12月16日に『Nano Letters』誌に公開されている。

「伝統的なカメラや望遠鏡における凸レンズは、空間的にかさばるとともに重くなる不便さがある。スマホカメラのレンズもガラス窓の下に隠れているだけで、実際にはレンズの厚さに相当する空間が必要」と、研究チームは語る。天体望遠鏡などでは幾つものレンズ系が必要であり、全体として非常に大きなシステムになっている。一方、2000年代に入り、光の波長よりも小さい構造を周期的に二次元配置して、屈折率など物質の光学特性を人工的に操作できるメタサーフェスが注目されるようになり、平面状レンズへの応用も検討されてきた。

口径1mm以下のメタレンズは、これまでも開発されているが、研究チームはレンズ口径を80mmまで拡大し、天体望遠鏡のような大きな光学システムにも使えるようにすることを試みた。メタレンズは通常、集束電子ビームを用いたリソグラフィーにより作製されるが、ビーム径が小さいことで処理能力に制約があり、作製できるレンズの口径に限界がある。

そのため研究チームは、コンピューターチップを製造するのに用いられる、波長100~280nmの深紫外線(DUV)による露光を利用したフォトリソグラフィーの活用を探求した。DUVフォトリソグラフィーは、処理能力と歩留りの高いプロセスで、微細なパターンを維持しつつ大きなサイズを製造できるという特長がある。また、メタレンズが回転対称性を持つことに着目し、メタレンズが作製されるウェハーを四分円に領域分割し、1つの四分円を露光した後、90度ずつ回転して残りの四分円を順次露光することで、処理能力を高めることに成功した。

その結果、従来のメタレンズよりも大口径かつ薄く、高い解像度と長い撮像距離を持つメタレンズを作製する手法を実現した。そして実際にコンパクトなメタレンズ望遠鏡を構築し、地理的構造がわかる月面画像を捉えることに成功した。研究チームは、「今後の課題として、可視光領域における色収差を含めた光学収差を補償することで、より小型で鮮明な画像が得られるメタレンズを開発できる」と、期待を示している。

関連情報

Flat, pancake-sized metalens images lunar surface in an engineering first | Penn State University

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