- 2021-5-29
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- Human in the loop(人間参加型)機械学習, IEEE Transactions on Neural Systems and Rehabilitation Engineering, スタンフォード大学, パワードスーツ, 学術, 機械学習
スタンフォード大学の研究チームは、足首に装着する外骨格型のパワードスーツを開発し、機械学習により最適化することで、人の歩行速度が約40%向上することを実験で確認した。将来的に高齢者の歩行速度の回復に役立つ可能性がある研究で、研究成果は『IEEE Transactions on Neural Systems and Rehabilitation Engineering』に2021年4月20日付で公開されている。
この外骨格型パワードスーツは研究チームが開発したプロトタイプで、靴とすねに装着し、外部モーターによりパワードスーツ背面のストラップを引き上げるものだ。ストラップはアルゴリズムで制御されており、かかとを引き上げ、つま先を下に向けることで、装着者が地面を蹴り出す手助けをする。
歩行速度向上の検証実験では、健康な若者の被験者10人が、パワードスーツを装着し、5つの異なる条件下で、トレッドミル上を自分のペースで歩行した。各条件は、パワードスーツ無し、パワードスーツを装着しているがオフにしている状態、パワードスーツを速度に最適化したモード、パワードスーツを消費エネルギーに最適化したモード、パワードスーツをゆっくり歩くように調節したモードだ。速度最適化は、Human in the loop(人間参加型)機械学習により行い、被験者が歩きながらパワードスーツの設定を繰り返した。最適な動作モードを見つけるまでに約150回の調整を行い、1人あたり約2時間を費やした。
検証の結果、速度最適化したパワードスーツを装着すると、パワードスーツ無しと比べて、平均して42%速く歩けることが分かった。また、エネルギー消費量も、個人差が多いものの1mの歩行あたり平均で約2%削減した。消費エネルギーに最適化したモードでは、エネルギー消費は減少したものの歩く速度はそれほど速くならなかった。
研究チームは今後、高齢者を対象とした検証実験や、装着感向上のためのデザイン改善などを予定している。