物質・材料研究機構(NIMS)は2018年8月10日、北海道大学、ドイツ・ウルム大学と共同で、炭素材料が1 at%以下の微量の窒素導入で活性な酸素還元電極触媒になることを発見し、その活性化の仕組みを説明することに成功したと発表した。
燃料電池の正極で用いられる酸素還元反応(ORR)は、燃料電池の効率を決めているとされ、白金など特別な金属のみがORRを活性化できると考えられてきた。しかし近年、炭素に窒素を導入した材料でも同反応を活性化できると報告され、世界中で炭素系電極触媒の研究が進められている。しかし、なぜ炭素と窒素でORRが活性化するのか、その仕組みは分かっていなかった。
そこで研究チームは、異なる窒素の含有量と化学構造を持つ複数のモデル炭素触媒を調製。効率を決めている過程と酸素吸着の仕方を調査した。さらに、触媒表面の形態や窒素分布を詳細に観察。実験を正確に反映した理論モデルを設計し、炭素触媒を用いたORRの微視的電極過程を解析した。その結果、炭素材料への1 at%以下の微量の窒素導入で、活性化できることを示し、その機構を実験と理論により説明することに成功した。
同成果は、より高活性な炭素系電極触媒の設計や、より詳細な微視的電極過程の解析をする助けになるという。また今後は、より高い特性を示す炭素系触媒を探索することで、ありふれた元素による高効率な電気エネルギーを生産可能とする材料の合成を目指すとしている。