高密度に酸基を有する高伝導高分子電解質膜を開発 名古屋大

名古屋大学は2023年4月18日、次世代燃料電池や水電解装置などでの利用が期待される、高密度に酸基を有する高伝導高分子電解質膜を新たに開発したと発表した。研究成果は2023年4月19日、アメリカ化学会雑誌「ACS Applied Polymer Materials」のオンライン版に掲載された。

電解質膜の伝導率は、電解質膜中の酸基の密度と強い相関関係があるとされる。電解質膜中の酸基の密度はイオン交換容量(IEC、単位はmeq/g)によっておおよそ表現が可能で、高密度に酸基を有する高IECの電解質膜の開発に注目が集まっていた。しかしIEC=1.0 meq/g以上の電解質膜の合成は困難で、市販用では IEC=0.9 meq/g程度の電解質膜が用いられていた。

同大の研究グループでは、IEC=1.0meq/g以上の高密度に酸基を有する高分子電解質膜を合成するため、保護基でキャップした酸基を有するモノマーを重合してポリマーを合成し、電解質膜とした。保護基は比較的マイルドな条件で外して保護基でキャップされていない酸基とし、このような手法でIEC=5.0meq/gの高分子電解質膜の合成に成功した。

燃料電池の一般的な使用条件下で、IEC=約0.9 meq/gの酸基密度を有する従来型の市販のパーフルオロスルホン酸ポリマー膜(A膜)や、スルホン化ポリスチレン膜(B膜)の伝導率は、それぞれ0.15S/cm、0.091S/cmだったのに対し、今回開発した高密度に酸基を有する電解質膜では、0.93S/cmという6倍以上の高い伝導率を示した。

2040年代の燃料電池は、現在よりも高い温度、低い湿度での使用が想定されている。研究グループは、今回開発した技術は厳しい作動条件でも高伝導率を示す高分子電解質膜の合成、および開発に貢献できる脱炭素技術だとしている。

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高密度に酸基を有する高伝導高分子電解質膜を開発 ~次世代燃料電池・水電解装置開発等に資する脱炭素技術~ – 名古屋大学研究成果情報

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