優れた近赤外光遮蔽性能を持つ透明導電体ナノシートを発見し、世界最高性能の日射遮蔽膜を開発 名古屋大学

名古屋大学は2023年5月22日、高い近赤外反射性能を持つ新しい透明導電体ナノシートを発見し、これをガラス上にコートすることで、世界最高性能の近赤外反射率53%と遮熱効果を示す、日射遮蔽膜の開発に成功したと発表した。

優れた近赤外光遮蔽性能と可視光透過性を併せ持つ日射遮蔽膜(近赤外遮蔽膜)は、可視光を取り込みながら太陽光の熱源となる近赤外光を効率的にカットできる。このため同大学によると、建築物の空調を省エネルギー化できる素材として、その重要性が高まっている。

従来日射遮蔽膜には、錫ドープ酸化インジウム(ITO)などの酸化物透明導電体薄膜が利用されてきたが、希少金属利用による資源リスクや、製造コストに課題があった。また、遮蔽特性を向上させようとすると可視光透過性が低下するという、トレードオフ関係が課題となっていた。

同大学では以前からナノシートをベースとした透明導電体の開発および光学薄膜応用を進めてきた。今回、ナノシートの出発原料には、層状構造を持つ酸化タングステン(Cs4W11O35)を使用。ソフト化学プロセスによって層状構造を層1枚まで剥離し、透明半導体である酸化タングステンナノシート(Cs2.7W11O35)を合成した。

これに酸素欠陥の導入によるキャリア(電子)注入を実施した。水素/アルゴン混合ガス還流下550℃で還元熱処理すると表面のみが還元され、酸素欠陥が導入された還元型ナノシート膜(Cs2.7W11O35-ddは酸素欠陥量)が作製された。

このナノシート膜の導電特性を評価すると、従来のITOに匹敵する高い導電性を示した。光学特性評価を行ったところ、優れた近赤外反射特性と可視光透過性を示し、膜厚(積層数)とともに近赤外反射特性が向上することを確認した。膜厚50nm(積層数20層)の超薄膜において、71%の高い可視光透過率を維持しながら、近赤外反射率53%という世界最高性能の反射率を示した。

還元型ナノシート膜の構造評価の結果(断面透過型電子顕微鏡像)

高い近赤外反射率特性を示す理由について検討した結果、金属-半導体ヘテロ構造がポイントになっており、表面の金属層(キャリア注入層)で効率的に近赤外光が反射されていることが分かった。

今回開発した日射遮蔽膜を、建築物や自動車の窓ガラスなどに適用することで、空調の省エネルギー化につながる重要な技術に発展することが期待されるという。

関連情報

世界最高性能の日射遮蔽膜の開発に成功 近赤外反射率53%と太陽熱カットを実現。建築物の省エネ・CO2削減のキー技術。 – 名古屋大学研究成果情報

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