二酸化炭素を常温常圧で固体に――クラスレートを使った回収技術を開発

Credit: Cell Reports Physical Science (2023). DOI: 10.1016/j.xcrp.2023.101383

大気に拡散した二酸化炭素(CO2)を回収する技術は、温室効果ガスの削減に向けて注目されている。メタンハイドレードは、CO2などの気体分子を高圧下で捕捉、封じ込めることができるとして研究されている。しかし、この条件を実験室で再現することは難しく、またメタンハイドレードは冷凍保存が必要なため、エネルギー消費量が大きいという問題もある。

アブドラ王立科学技術大学(KAUST)、中国科学技術大学(USTC)、南方科技大(SUSTech)の国際研究チームは、メタンハイドレードを模倣した格子状の構造を作り出し、エネルギー効率の高いCO2回収技術の開発に成功した。常温常圧でCO2を固体として貯蔵、輸送することが可能だ。研究成果は、『Cell Reports Physical Science』誌に2023年5月17日付で公開されている。

この技術は、グアニジン硫酸塩をベースとした「クラスレート(包接化合物)」と呼ばれる格子状の構造を作ることで、CO2を捕獲するというものだ。クラスレートとは、ホスト分子(または原子)が作る構造中にゲスト分子が配列した化合物を指し、水分子にメタンが取り込まれているメタンハイドレードもその一種だ。

クラスレートは共有結合を形成せずに安定しているため、グアニジン硫酸塩はCO2と反応することなくCO2分子を取り込む。研究チームは、グアニジン硫酸塩とCO2のクラスレートが常温常圧で安定性、非腐食性を示すことを発見した。この特性はクラスレートとしては珍しく、「エタノールアミンやアンモニアなど、一般的に炭素回収に使用される溶液と比べて非常に望ましい特徴です」と、KAUSTのCafer Yavuz教授は述べている。

従来、CO2を固体として保存するには、ドライアイスや圧縮CO2ボンベ、炭酸塩の形にしなければならなかった。しかし、このクラスレートは粉末固体として保存できるため、重量あたりの体積が非常に大きく、エネルギー消費が非常に小さい。

この新しいCO2回収/貯蔵技術は、プロセス全体を通してエネルギーをほぼ必要としないため、エネルギー効率に優れている。また、温室効果ガス捕捉するための既存の大型装置よりも安価だ。さらに、冷却や加圧を必要とせずに貯蔵や輸送ができるため、実生活への応用が期待される。

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