NASA、米海軍の巨大回転装置で宇宙飛行をシミュレート――平衡感覚喪失時に対処する方法の効果を調査

Credit: U.S. Navy

アメリカ航空宇宙局(NASA)は、米海軍の協力を得て、宇宙飛行士が宇宙で陥る可能性がある、空間識失調に関する対処法の研究を進めている。空間識失調とは、宇宙のように重力が微小な環境で重力を感知する器官と視覚などからの情報との間に矛盾が生じ、自分と対象物との空間的認知が難しくなる状態だ。NASAが空間識失調に対処する方法の効果を実証するために利用するのが、米海軍の見当識失調研究装置「Kraken」だ。

Krakenの全長は約15mで、重量は100トン。最大定員2名のコックピットを再現した搭乗用装置と、水平方向に360度回転可能な直線レールで構成され、搭乗用装置はレール上を素早く往復移動すると同時に勢いよく回転する。搭乗用装置の軸は6方向に動かすことが可能で、搭乗者のめまいや吐き気を誘発するような複雑なフライトシナリオもシミュレートできる。

NASAと米海軍の科学者らは調査に参加する現役兵士を24人募集する予定で、参加者は3Gに達する加速度で回転するKrakenに60分間乗り続ける。参加者のうち半数の12人は、Krakenから降りた後に頭と目の動きを追跡するビデオゴーグルを装着して頭を動かす所定の動作を行い、残りの12人は何もしない。その後、24人全員に10m歩行など4種類のタスクを行ってもらう。

宇宙飛行士の話によると、頭を少し動かすと平衡感覚の回復が早くなったようで、調査で実効性が確認できれば、宇宙飛行中の重力変化に対応する手順として採用できる可能性があるという。

調査を主導する米ジョンズ・ホプキンス大学のMichael Schubert氏は「Krakenを使ったテストのおかげで、頭を動かすことで平衡感覚が回復するのであれば、どのような頭の動作が速やかな回復を促すのかということを徹底的に究明できるようになるだろう」としている。

関連情報

NASA Harnesses US Navy Spinning Device to Simulate Spaceflight | NASA

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る