- 2023-6-29
- 技術ニュース, 機械系, 海外ニュース
- GTL(ガスタービン研究所), MIT, ガスタービンエンジン, ターボエレクトリック推進システム, ハイブリッド, パワーエレクトロニクス, マグネットアレイ, ローターダイナミクス, 三菱重工業, 二酸化炭素, 低損失ステーター, 分散型パワーエレクトロニクスシステム, 学術, 民間旅客機, 熱交換器, 電動航空機, 電気モーター, 高速ローター
航空業界の膨大な二酸化炭素排出量は、電動化によって大幅に削減される可能性があるが、今までのところ小型の電動航空機しか実用化されていない。これらに使用される電気モーターは数百キロワットの出力を発生するが、民間旅客機のような大型で重い航空機を電動化するには、メガワット級のモーターが必要になる。その場合、電動モーターはガスタービンエンジンと組み合わせたハイブリッド、あるいはターボエレクトリック推進システムになると考えられる。
このニーズに応えるため、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは現在、大型航空機の電動化に向けた重要な足がかりとなる、1メガワットのモーターを製作中だ。チームは、MITのガスタービン研究所(GTL)と電磁・電子システム研究所の教員と学生らで構成されており、三菱重工業がプロジェクトのスポンサーになっている。
モーターは主に次の要素で構成される。極性の向きを変えながらマグネットアレイが並ぶ高速ローター。その内側には、複雑なコイルを構成する銅巻線が巻かれたコンパクトな低損失ステーター。トルクを伝達しながらコンポーネントを冷却する最新の熱交換器。そして、ステーターの各コイルに流れる電流を高周波で正確に制御する、30枚の特注回路基板で作られた分散型パワーエレクトロニクスシステムだ。
研究チームはこれら構成要素の熱管理からローターダイナミクス、パワーエレクトロニクス、電気機械構造まで、全ての考慮事項を統合的に評価し、1メガワットの出力を得るための最適な組み合わせを見つけ出す、非常に広範な設計空間の探索を行った。設計されたモーターとパワーエレクトロニクスは、それぞれスーツケース1個分の大きさで、重さは大人1人分にも満たない。
研究チームは、完全に動作する最初の電気モーターを組み立て、2023年秋にはテストを開始する予定だ。将来的には、1メガワットのモーターを複数個使って、翼に沿って分散配置された複数のプロペラを駆動することも想定している。さらに、1メガワットの電気機械設計を基礎として、数メガワットのモーターにスケールアップし、より大きな旅客機の動力源にできる可能性があると、研究チームは考えている。