自動車から発生した有害物質を道路内で除去する光触媒コンクリート

Credit: Korea Institute of Civil Engineering and Building Technology

韓国建設技術研究院(KICT)の研究チームが、窒素酸化物などの環境汚染物質を除去できる光触媒コンクリートを開発し、トンネル環境での実験で除去効果を実証した。

道路インフラにおける空気環境改善の効果的な方法として、排気ガスを排出しない電気自動車(EV)の普及が挙げられる。しかし、現状ではガソリン車が主流で、自動車の排気ガスによって発生する有害物質の効率的な除去対策が必要である。そこで、道路インフラ内で有害物質を除去する光触媒を利用した建築材料が、解決策として注目されている。

光触媒は、酸化チタンに代表される、光が当たると触媒反応によって汚染物質を分解できる半導体材料だ。光と反応して強い酸化力を持つ活性酸素を発生し、酸化分解反応によって、窒素酸化物や硫黄酸化物などを無害な物質に変換する。

光触媒は、大気中の有害物質を除去する優れた性能を持つにもかかわらず、製造コストが高いため、建築材料への利用は進んでいない。研究チームは2018年から、下水汚泥から光触媒を低コストで大量生産する開発を進め、性能と経済面で両立した光触媒建築材料の開発に成功した。さらに、高い光触媒作用を示すコンクリート材への光触媒の最適な混入法を調べ、光触媒コンクリートの開発に成功し、その成果を2022年4月、「KSCE Journal of Civil and Environmental Engineering Research」に発表した。

研究チームは2023年5月、開発したコンクリートの効果を実用レベルで検証するため、韓国ソウルの盤浦地下道トンネルの内壁に光触媒コンクリートを使用した実証実験に取り組んだ。その結果、24時間で窒素酸化物濃度約18%の低減を確認した。地下道トンネルの壁面に人工光源を設置し、自然光の届かない地下でも光触媒機能を発揮させることに成功した。さらに、光触媒分解生成物が、コンクリートに含まれるカルシウムによって塩に変化し、雨に洗い流されることで、メンテナンスなしでも光触媒機能が長期間にわたって持続することも分かった。

KICTのJong-Won Kwark博士は、「光触媒を利用した建設技術は、国民の生活環境における環境汚染物質の低減に即効性があります。今後は、自治体や公社との協力体制を築き、試験的な実証を他の現場にも広げ、実用上効果のある製品化/流通を目指します」と説明した。

関連情報

Photocatalytic Concrete for Clean Air in Underground Tunnels

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る