レーザー表面加工で着氷を迅速に除去――不凍液を使わない新たな除氷技術を開発

© AIRBUS

フラウンホーファー研究機構 材料・ビーム技術研究所(IWS)の研究チームは、エアバスとドレスデン工科大学と共同で、航空機の表面に付着した氷が自力で剥がれ落ちる除氷技術を開発した。研究成果は、『Advanced Functional Materials』誌に2020年2月24日付で発表されている。

氷の付着は航空機の飛行に安全上のリスクをもたらすため、離陸前に航空機の表面に不凍液などの薬剤を散布して、氷や雪の付着を防ぐ必要がある。しかし、飛行機1機につき400~600Lも使われる薬剤は、環境に有害であり費用もかかる。また、熱風を利用して飛行中に翼表面にできる氷を溶かすシステムがあるが、加熱するための燃料も必要になる。

今回研究チームは、DLIP(Direct Laser Interference Patterning:直接レーザー干渉パターニング)という技術を利用して、航空機表面に複雑なエッチングパターンを施した。表面にミクロンレベルでの三次元構造を作り出すことで、氷と接する面を大幅に減らすことができる。その結果、氷はある程度の厚みと重さになると、自然に翼から滑り落ちてゆく。

研究チームは、風速毎秒65~120m、気温マイナス10℃以下という条件下の風洞テストを実施、加熱することなく一定時間が経過すると、翼から氷が剥がれ落ちることを実証した。また、加熱による氷の融解実験では、レーザーエッチングをしていない翼では氷が解けるのに70秒かかったが、エッチングをした翼ではわずか5秒で氷が完全に溶けた。これらの結果から、化学薬品を使わずに航空機の氷を素早く除去できるだけでなく、加熱システムに必要な燃料消費量を大幅に削減できる可能性があることが示された。

DLIP技術は、航空機だけでなく、風車のプロペラや船舶、車の窓ガラスなど寒冷地で氷結する可能性のあるものへの応用が可能だ。現在、研究チームは、A350型機の表面にDLIP処理を施した航空機を使用して、実際の飛行テストを進めている。

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