リチウムイオン二次電池の正・負極内のリチウム組成変化を動作下で同時測定に成功

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(a)測定時の充放電曲線 (b)入射X線に対して電池の高さ方向を変えながら測定したコンプトン散乱X線スペクトルから得られたSパラメータ (c)リチウムイオン濃度分布

群馬大学理工学部の研究グループは2017年8月2日、高輝度光科学研究センター、トヨタ自動車、立命館大学、京都大学と共同で、大型放射光施設SPring-8の高輝度・高エネルギーの放射光X線を用いて、動作下にある市販のリチウムイオン二次電池から、リチウムイオン濃度分布を測定し、正・負極内のリチウム組成変化を同時に明らかにすることに成功した。

リチウムイオン二次電池の特性向上に関する問題として、電極内での反応分布がある。一般的な合剤電極における反応は、電解液のイオン伝導度や粘度、電極の構成等の内的要因と、電池自体の構造や温度等の外的要因によって影響を受ける。さらに電気自動車等に用いられる大型のリチウムイオン二次電池では、この反応分布が複雑化し、電池性能に悪影響を及ぼすという大型電池特有の問題もある。これらの解決のためには、電極内のリチウムイオン濃度を、その反応下で定量する手法の開発が重要となる。

同研究グループは、SPring-8の高エネルギー非弾性散乱ビームラインBL08Wにおいて、市販のコイン型リチウムイオン二次電池(VL2020)を用いて測定を行った。測定手法は高輝度・高エネルギーX線を用いたコンプトン散乱法を用い、リチウムイオン二次電池を充放電させながら、コンプトン散乱X線スペクトルを測定した。コンプトン散乱は、X線光子と電子の衝突後、光子が電子によって散乱され、電子も弾き飛ばされる散乱現象。これを用いたコンプトン散乱法は、100keV以上の高エネルギーX線を使用するため、高い物質透過能により破壊することなく電池の内部反応を測定できる。

測定により得られたコンプトン散乱X線スペクトルに、以前同研究グループが開発したSパラメータ解析法(コンプトン散乱X線スペクトルのラインシェイプの変化を数値化したパラメータを用いる解析手法)を適用し、リチウムイオン濃度分布を得た。その結果、充電時にセパレータと負極との界面付近にリチウムイオンの偏析を示唆するリチウムイオン濃度の高い領域が存在することを観測。さらに、リチウムイオン濃度についての検量線を用いて、動作下でのバナジウム酸化物正極とリチウムアルミ合金負極のリチウム組成の変化を同時測定することに成功した。

今回の手法の特徴は、高い物質透過能を有する高エネルギーX線を用いた分析手法であるため、非破壊で元素を定量できること。また、リチウムイオン濃度分布を構成する画像のそれぞれの画素がコンプトン散乱X線スペクトルからできているため、Sパラメータ解析法と組み合わせてリチウムイオンの定量情報を抽出できることも挙げられる。

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