- 2023-7-27
- 化学・素材系, 技術ニュース
- QST, ヒドリド, ペロブスカイト型バナジウム酸水素化物, リチウムイオン電池, 塩化ストロンチウム, 東京工業大学, 研究, 負極材料, 超高圧合成法, 酸水素化物, 量子科学技術研究開発機構(QST)
東京工業大学と量子科学技術研究開発機構(QST)は2023年7月26日、超高圧合成法により、ペロブスカイト型バナジウム酸水素化物SrVO2.4H0.6とSr3V2O6.2H0.8を合成したことを発表した。超高圧合成において、新規酸水素化物の合成に添加剤を加えることで成功した。
酸水素化物は近年、アンモニア合成触媒や電池材料として注目されている新しい物質群だが、高温高圧などの特殊な合成条件が必要なため、合成例が少なく、新規の合成法の開発が求められていた。
研究では、新規ペロブスカイト型バナジウム酸水素化物SrVO2.4H0.6とSr3V2O6.2H0.8を、超高圧合成法(1200℃、2万気圧)を用いて合成した。これらの酸水素化物は、原料となるSrH2、SrO、V2O3という複数の物質を混合し、反応させるだけでは狙った化合物は得られない。しかし、ターゲットの組成には影響しない塩化ストロンチウム(SrCl2)を添加剤として20wt%加えると、新規酸水素化物を選択的に合成できることがわかった。
実際の反応の様子を観察した結果、高温では添加剤を含む原料が溶けることで、反応容器内の物質が均一に混合され、選択的に反応が進行していた。超高圧合成法は、外部から物理的に反応容器内をかき混ぜることができないため、高温で液体になる物質を混ぜ込む手法は、酸水素化物以外の物質合成にも役立つ可能性がある。
得られた新規物質は、酸水素化物として初めてリチウムイオン電池の負極材料として利用できることを示した。また、ヒドリドを加えていない同構造の酸化物と比べ、高レート領域で高い性能を示した。
開発した新しい合成法は、酸水素化物だけでなく、さまざまな化合物群に適用できる可能性が高く、今後の研究の発展が期待できる。また、今後の材料設計にも役立つと考えられる。