- 2023-8-9
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- イジング問題, 光ニューラルネットワーク, 大阪大学, 整数重みナップサック問題, 最適化計算, 研究, 科学技術振興機構(JST), 空間光イジングマシン, 組み合わせ最適化問題, 計算モデル
大阪大学は2023年8月8日、同大学の研究グループが、光を用いて大規模な組合せ最適化問題を解く空間光イジングマシンの新しい計算モデルを提案したと発表した。
空間光イジングマシンとは、空間光変調を用いて「イジング問題」と呼ばれる組合せ最適化問題を解く専用のハードウェアを指す。光の空間並列性を用いることで、変数の数に関わらず、計算の1反復に要する時間が原理的に一定となる。
冒頭の画像は、空間光イジングマシンの概略図を示したものだ。1万変数以上の大規模な組合せ問題であっても、高速かつ高効率に処理可能。また、光を用いるため結線が不要で、全結合の問題を容易に処理できることも特徴となっている。
一方で、従来の空間光イジングマシンは対応可能なイジング問題に制約があり、実問題への応用が困難となっていた。
同研究グループは今回、空間光イジングマシンのハードウェア実装を変えずに、任意のイジング問題を処理できる新しい計算モデルを提案した。
同モデルを用いることで、光の特性により大規模で全結合のイジング問題が効率的に処理可能。さらに、特に低ランク性を有するイジング問題に対する効率に優れるという独自の特徴を有することが判明した。
同研究グループは、従来の空間光イジングマシンが扱えなかった整数重みナップサック問題を低ランクのイジング問題として定式化。最適化計算が可能なことを実証した。
加えて、同モデルを用いて統計的学習を行うための具体的な学習則を導き出した。手書き数字画像データの低ランク学習が行えることを確認している。
同モデルにより空間光イジングマシンを実用化できれば、大規模な組合せ最適化や統計的学習の実問題に対する計算の高速化、低消費電力化に繋がるものと見込まれる。
さらに、社会実装が進むことで、エネルギー利用の効率化、CO2排出量低減といった分野に寄与することも期待される。
なお、今回の研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 CREST「Society 5.0を支える革新的コンピューティング技術」研究領域における研究課題「光ニューラルネットワークの時空間ダイナミクスに基づく計算基盤技術」などの一環として行われた。