次世代核融合実験装置の実現に向けて、高温超伝導大電流導体を開発 核融合科学研究所

核融合技術の実用化に向けた研究を進めている核融合科学研究所(NIFS)は2023年8月17日、核融合炉のマグネットに使用可能な高温超伝導大電流導体を開発したと発表した。核融合エネルギーの早期実現が期待できる成果だとしており、研究成果は2023年8月9日、『Journal of Physics Conference Series』に掲載された。

磁場閉じ込め方式の核融合炉では、超伝導マグネットが作る強力な磁場によって1億度以上の超高温プラズマを閉じ込め、核融合反応を起こす。現在の実験装置に使われている超伝導マグネットは液体ヘリウムを用いてマイナス269度まで冷やしているが、世界的なヘリウムの供給不足が課題となっている。

このため、より高い温度で運転できる高温超伝導マグネットが実現すれば、ヘリウムの消費を抑えられるうえ、これまでより強い磁場を発生でき、核融合炉のサイズを小さくできると期待されている。

NIFSは2005年から世界に先駆けて高温超伝導大電流導体の開発に着手。従来とは異なる方法で作成した導体を用いたSTARS導体を開発した。高温超伝導線材であるREBCO(レブコ)系線材をより合わせてつくる従来の導体とは違い、線材を単純に積層するだけで機械的に強い構造にしたのが特徴だ。電流を担った線材が臨界を超えても、過剰な電流を他の線材に受け渡すのに余裕があり、結果として導体全体の温度を上げないよう保つことができる。

2014年に試作品で実験したところ、10万アンペアという高温超伝導導体の電流世界記録を達成したが、今回の実用可能な導体に仕上げるまで8年かかった。

今回、完成したのは2万アンペア級のSTARS導体で、電流密度が高く、1mm2あたり80アンペアの電流を流すことを目標としている。これは、同規模の低温超伝導導体の約2倍の性能となる。電流密度が高くなれば、核融合炉のマグネットを細くでき、プラズマを取り囲む機器の設置に余裕もできる。また、電流の上げ下げで毎秒1000アンペアという高速通電を行い、合計で200回以上繰り返しても安定に通電されていることも確認できた。

NIFSは「この導体をさらに大型化して、4万アンペア以上にすれば、将来の核融合炉用大型マグネットにも用いることができる」としており、今後、STARS導体を用いた大型のテストコイルを製作し、さらなる実証を進めていく。

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研究成果(プレスリリース) / ニュース 核融合科学研究所

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