工業炉向け水素-酸素バーナを開発――燃焼時にCO2が生じない水素ガスが燃料として使用可能に 大陽日酸

大陽日酸は2023年8月28日、工業炉向け水素-酸素バーナを開発したと発表した。水素ガスを燃料として用いるもので、燃焼時にCO2が発生しない点を特長とする。

今回、同社の高速酸素バーナランス「SCOPE-JET」、超低NOx酸素(富化)バーナ「Innova-Jet」、自励振動型酸素(富化)バーナ「Innova-Jet Swing」の3種において、水素を用いた燃焼が可能となった。

SCOPE-JETは、鉄スクラップ溶解用電気炉向けの省エネルギー技術だ。電炉製鋼プロセスの生産性向上や、エネルギー原単位削減に寄与するものとなっている。

電炉の製鋼プロセスにおいて、鉄スクラップが投入された直後の「溶解期」で酸素バーナとして機能し、スクラップ溶解を促進。また、スクラップが溶け落ちた「精錬期」では酸素ランスとして機能する。

SCOPE-JETを水素燃焼化するにあたっては、火炎温度が高く燃焼速度も速くなるため、バーナへの熱負荷軽減対策が課題だったが、同社独自のノズル構造を採用することで、安定した燃焼を可能にしている。また、燃料に天然ガスを用いる場合と同レベルの噴流特性となった。

冒頭の画像は、SCOPE-JETの燃焼火炎を示したものとなっている。

Innova-Jetは、加熱炉や溶解炉向けの省エネルギー技術。排ガスによる熱損失を低減し、エネルギー原単位削減に寄与する。

加熱炉などに酸素(富化)燃焼を用いる場合、大量に生じるNOxを抑制することが必要となるが、同社独自のノズル構造および多段燃焼を採用し、NOxを抑制した。

Innova-Jetの水素燃焼化では、火炎温度が高くなるため、さらなるNOxの抑制が課題となっていた。同社は、既存のノズルコンセプトをさらに水素用に最適化し、NOxを工業炉で運用できるレベルに抑制。燃料に天然ガスを用いる場合と同レベルの伝熱特性となった。

Innova-Jetは、欧州で実炉での評価試験を進めている。

Innova-Jetの燃焼火炎

Innova-Jet Swingは、高温の加熱炉や溶解炉向けの省エネルギー技術だ。排ガスによる熱損失を低減するほか、自励振動現象を用いて火炎を左右に振動させることが可能。炉底が浅い炉などを広範囲に均一加熱できる。

Innova-Jet Swingの水素燃焼化では、バーナへの熱負荷軽減対策として、酸化剤ガスによる自己冷却構造を最適化することで、安定した燃焼を確認している。

Innova-Jet Swing の燃焼火炎

同社は今後、今回開発した水素-酸素燃焼技術をベースに、各種工業炉に適したさまざまな水素-酸素バーナの開発および設計を進める。

関連情報

工業炉向け水素-酸素バーナを開発 カーボンフリー燃料と酸素燃焼技術で工業炉の CO2排出量削減に貢献

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る