垂直方向の圧力とせん断応力の分布を同時に検知できる、光学式フレキシブル圧力センサシートを開発 東京大学

東京大学は2023年9月12日、同大学大学院工学系研究科の研究グループが、垂直方向の圧力とせん断応力の分布を同時に検知できる、光学式フレキシブル圧力センサシートを開発したと発表した。

せん断応力とは、面と平行方向に力を加えた際に、その面に滑らせるように作用する応力のことを指す。

既存の圧力センサは、垂直方向の圧力しか検知できないものが多い。垂直方向の圧力に加えて、せん断応力も検知可能となることで、ロボティクスや神経工学、ヒューマンマシンインターフェース(HMI)、ヘルスケアといった分野への応用が期待できる。

せん断応力を検知できる圧力センサとしては、光学式圧力センサが、多点での計測や高空間分解能、高耐久性といった特性を有していることから注目されている。

一方で、既存の光学式圧力センシングシステムは複雑な光学系を必要とするため、素子自体が固い。また、デバイスが厚く、柔らかい曲面などへの実装が困難なことが課題となっていた。

今回開発した光学式フレキシブル圧力センサシートでは、フレキシブル面光源、フレキシブルイメージャー、フレキシブル感圧ゴムシートの3層を積層。面光源から出た光が、感圧ゴムシート内を通過し、その後フレキシブルイメージャーが光の強度分布を検出する仕組みとなっている。

フレキシブル面光源は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を光導波路(物質の光学特性の違いを利用した光の伝送路)に採用した。表面に酸化チタンナノ粒子を分散させた拡散層および銀を反射層として成膜している。

同センサシートは、圧力が加わることで変化した光強度分布により、垂直方向の圧力とせん断応力の分布を計算する。

感圧ゴムシートには、厚さ0.8mmのフレキシブルで多孔質なPDMSシートを採用した。これにより、センシングの感度が向上している。

垂直方向の圧力に対して、1〜360kPaの圧力を検知可能。また、せん断応力に対しては、0.6〜100kPaの圧力が検知可能となった。

さらに、5mmの格子状に配置した6×8のセンサアレイを用いて、垂直方向の圧力とせん断応力の圧力分布を同時に計測できることを実証している。

垂直方向の圧力とせん断応力の分布の同時計測

同センサシートは今後、ロボットアームへの実装といった電子皮膚への応用や、手すりに実装し、病院などでの歩行中に手すりにかかる力具合を定量的に評価するシステムなどへの応用が期待される。

関連情報

3軸方向の圧力を検知可能な光学式フレキシブル 圧力センサシートの開発に成功 ―ヘルスケア応用やロボットの電子皮膚への応用に期待―|プレスリリース | UTokyo-Eng

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