AIを活用しない従業員は残れない――IBMの経営幹部を対象とした調査結果

IBMの調査機関であるIBM Institute for Business Value(IBV)が、AI(人工知能)が人間の仕事に及ぼす影響について、世界28カ国の経営幹部3000人を対象に行った調査結果を発表した。IBVによると経営幹部らは、AIの進化に伴い従業員のリスキリングの必要性を感じており、「AIは人の仕事を奪わないが、AIを活用しない人は活用する人に取って代わられる」と考えているのだという。

今回の調査によると、AIは人間の仕事を奪うよりも、むしろ強化すると答えた経営幹部は全体の87%。また、AIの導入に伴いリスキリングが必要な人材は労働人口の40%に及ぶ。世界経済フォーラム(WEF)の予測でも、AIと自動化の影響で2020年から2025年の間に世界で8500万の仕事がなくなる一方、9700万の新たな仕事が生まれるとされている。AIは雇用機会を減らすことはないものの、労働者に大きな影響を与えることは間違いなさそうだ。

特に「ChatGPT」などの生成AIの登場により、人間に求められるスキルは大きく変わってきている。今回の調査結果で興味深いのが、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の総称である「STEMスキル」の重要性の低下だ。2016年時点のIBVの調査では、職場において重要なスキルとしてSTEMを挙げた経営幹部は最も多く42%に上った。しかし、2018年には33%に下落、今回もわずか28%にとどまった。IBVはこれについて、例えばノーコードのソフトウェア開発ツールにより、プログラミングの専門知識がない人でもアプリ開発ができるようになってきているように、テクノロジーがユーザーフレンドリーになるにつれ、高度な技術的スキルの必要性が低くなってきているのだと推測する。同じように「コンピューターやソフトウェアの基礎的スキル」の重要性も、2016年の40%から31%に低下した。

逆に必要とされるスキルのトップ3になったのが、「時間管理と優先順位付けのスキル」「チーム環境で効率的に仕事するスキル」「効果的にコミュニケーションをとるスキル」だ。AIに技術的な仕事を任せられるようになることで、これらのスキルの重要性が上がってきていると言えるだろう。

関連情報

Augmented work for an automated, AI-driven world(PDF)

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る