銀ナノワイヤーを用いた透明導電フィルムを開発――耐久性とフレキシブル性が向上 DNPとマイクロ波化学

大日本印刷(DNP)とマイクロ波化学は2023年10月3日、銀の導電性繊維(銀ナノワイヤー)を用いた透明導電フィルムを開発したと発表した。同年12月のサンプル提供開始を予定している。

透明導電フィルムは、光の透過率が高く、視認性と導電性を両立できる点が特長だ。

透明導電フィルムでは、一般的にはPETフィルムにITO(酸化インジウムスズ)などの導電性金属酸化物を薄膜形成する工程が採用されており、真空中での成膜や高温焼結が必要となっている。

ただし、ITO膜には柔軟性がないため、急激な温度変化などで導電部のひび割れが生じることが課題となっていた。

大日本印刷は今回、同社独自のインキ配合とウェット方式による精密塗工技術を組み合わせて、銀ナノワイヤーを低温かつ均一に薄膜形成した透明導電フィルムを開発した。

低温で成膜できるため、基材の選択の自由度が向上。また、銀ナノワイヤーは繊維状であるため、ITOと比べて耐久性やフレキシブル性に優れる。

直径約11nmの銀ナノワイヤーを使用しており、可視光や近赤外光において高い透過率と低い拡散反射率を実現している。シート抵抗が30~70Ω/sq.の範囲で、ITOと比べて高い透明性を保つことができる。

銀ナノワイヤー分散液およびFE-SEM画像

また、透明導電フィルムに通電させることで、フィルム自体を効率的に発熱させることも可能。LiDARに透明フィルムヒーターを用いた場合、凍結や結露の防止が可能となる。さらに、拡散反射低減により検出感度も改善するため、寒冷地での自動運転といった用途に適する。

また、マイクロ波化学は、銀に直接マイクロ波を照射する結晶制御技術を改良。結晶を長さ方向に成長させ、高いアスペクト比で極細の銀ナノワイヤーを生産する技術を開発した。既存の手法と比較して、CO2の排出量を削減できる。

今後は、大日本印刷の反射防止フィルムや液晶位相差フィルムといった機能性光学フィルムと、今回開発した透明導電フィルムを組み合わせることで、ディスプレイや自動運転用LiDAR、通信といった分野において、透明フィルムヒーターや電磁波シールドといった新機能の提供を図る。

関連情報

高い透明性と導電性を両立した透明導電フィルムを開発 | ニュース | DNP 大日本印刷

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る