皮膚温度を変化させずに非接触で仮想的冷感を与える技術を開発 筑波大学

筑波大学は2023年10月18日、同大学システム情報系の研究グループが、皮膚の温度を実質的に変化させずに、非接触で仮想的冷感を与える技術を開発したと発表した。バーチャルリアリティ(VR)世界にて、瞬間的な温度感覚だけでなく、長時間の連続的な温度感覚を伴う体験ができるようになることが期待される。

より現実に近いVR体験を実現するために、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)による視覚情報だけでなく、他の感覚情報への要望が高まっている中で、 温度感覚は周囲の環境を認識するための重要な要素として注目されている。

気温の変化など皮膚で感じる連続的な温度感覚は、実際には同じ刺激を受け続けると次第に慣れ、新しい刺激を感じにくくなる。仮想空間の場面を切り替えた際には、このような「温度慣れ」によって温度感覚のずれが生じる。研究グループはこれまでに、ボルテックス効果を応用した非接触冷覚提示技術を世界に先駆けて構築しており、今回、これらの知見に基づき、新たな非接触型冷覚提示技術の開発に取り組んだ。

研究では、人間が持つ素早い温度変化を感じやすいという特徴を活用し、皮膚の温度変化をほぼゼロに保ちつつ、温度感覚を連続的に生じる非接触型冷覚提示技術を開発した。この技術は、素早い冷刺激と緩やかな温刺激の切り替えを冷たい気流と温かい光源を活用して繰り返し、皮膚の温度変化を生じずに冷覚を引き起こす。

異なる強度の冷刺激と温刺激の組み合わせを提示する実験を人に対して実施したところ、実質的な皮膚の温度変化を伴わずに、非接触で連続的に冷感を生じさせることができることが示された。また、生じる冷感の強さは、冷刺激の素早さを1.5倍にすることで、実質的に皮膚温度を変化させずに継続的に皮膚温度を低下させる従来技術と同程度を実現できることが示された。

開発した技術は、皮膚感覚を身体の状態を変化させずに人工的に作り出す新たな考え方を提供する。メタバースをはじめとするVR世界にて、急激な燃焼や突然の冷風などの瞬間的な温度感覚だけでなく、海外旅行などの長時間にわたる連続的な温度感覚を伴う体験への活用が期待される。

関連情報

冷えていないのに冷たい温度感覚VRを実現 | テクノロジー・材料 – TSUKUBA JOURNAL

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