半導体光触媒を使った人工光合成で世界最長の連続動作時間を達成 NTT

NTTは2023年10月27日、太陽光エネルギーを利用する半導体光触媒と、CO2を還元する金属触媒を電極として組み合わせた人工光合成デバイスを使って、世界最長となる350時間連続の炭素固定を達成したと発表した。CO2変換反応による累積炭素固定量は420g/m2で、スギが年間で固定する単位面積当たりの炭素量を上回る。

人工光合成は、半導体光触媒を用いた酸化電極と金属触媒を用いた還元電極から構成されるが、実用化に向けて、腐食などによる劣化の抑制や、長時間の反応に耐える長寿命の電極設計といった課題がある。また、人工光合成によるCO2変換は、水溶液中のCO2をCOやHCOOHへ還元する手法が広く用いられるが、水溶液中に溶解できるCO2の量には限りがあり、副反応が起こりやすくなる。このため、CO2を選択的に変換する電極構造やデバイス設計も必要となる。

同社はこうした課題を解決するため、気相中のCO2を効率的に変換できる人工光合成の実現を目指し、光をエネルギーとして利用するための長寿命の半導体光触媒電極と、電解質膜と一体化した繊維状の金属触媒電極によって構成された人工光合成デバイスを設計した。

半導体光触媒として用いている窒化ガリウム(GaN)系電極は、GaN表面と水溶液の界面で生じる劣化反応の抑制が課題だったが、同社はGaN表面の凹凸をより滑らかにし、光を十分に透過する厚さ2nmの均一な酸化ニッケル(NiO)薄膜を保護層として形成。GaNが水溶液に触れるのを防ぎ、電極の劣化を大幅に抑制した。

また、気相のCO2を変換するため、CO2拡散性の高い繊維状金属とCO2変換反応に必要なプロトン(H+)を反応場に供給する役割を持つ電解質膜を一体化した電極構造を考案。これによって、水溶液中に電極を漬けることなく、CO2変換反応に必要なプロトン(H+)を反応場に供給できるようにし、気相のCO2の直接変換を可能にした。

こうした電極構造の工夫で、従来に比べ10倍以上のCO2変換効率を発揮する人工光合成デバイスを作成した。

同社は人工光合成デバイスに疑似太陽光を照射し、気相のCO2変換試験を行った結果、350時間連続してCO2がCOやHCOOHに変換されたことを確認し、生成したCOやHCOOHから算出した単位面積当たりの累積炭素固定量は420g/m2に達した。350時間連続動作は、半導体光触媒を用いた人工光合成として世界最長となる。また、炭素固定量は、スギの木1本が1m2当たり約1年間で固定するCO2を上回る。

同社は今後、より高性能な人工光合成デバイスを実現するため、電極での反応の高効率化、電極の長寿命化の両立を図るとしている。

今回の成果のベースとなる技術は、2023年11月14日から17日まで、NTT武蔵野研究開発センタとオンラインで開催される「NTT R&D フォーラム― IOWN ACCELERATION」で展示される予定だ。

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半導体光触媒を用いた人工光合成において世界最長の連続動作時間を実現~樹木が年間で固定する炭素量を上回る炭素固定量を350時間連続動作で達成~ | ニュースリリース | NTT

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