リチウムイオンだけを通すポリマーコーティング――軽量で安価なリチウム硫黄電池の開発

豪モナシュ大学の研究チームは、ナノポーラス・ポリマーでコーティングしたリチウム箔負極を使用し、少ないリチウム使用量でサイクル特性の優れるリチウム硫黄電池を開発した。

同研究成果は2023年9月4日、「Advanced Sustainable Systems」誌に掲載された。

再生可能エネルギーへの転換が世界的な取り組みとなり、より効率良く安価で、持続可能なエネルギー貯蔵システムの開発が必要とされている。

現在、さまざまな分野で用いられているリチウムイオン電池には、寿命が短い、過熱しやすい、正極材料の供給が難しいなどの欠点がある。代替電池として、理論的エネルギー密度がより大きく、正極材料の硫黄が豊富で安価である、リチウム硫黄(Li-S)電池が期待され、開発が進められている。

Li-S電池は、硫黄を含む正極とリチウム金属を含む負極を持つ二次電池である。現在のLi-S電池技術には、正極で発生した反応中間体が負極へシャトリングする効果をはじめ、いくつかの副反応で負極のリチウムが消費され、電池容量とサイクル特性を悪化させる課題がある。

対策として負極に余剰なリチウム使用がよく用いられるが、電池の重量を大きくするため、体積や重量当たりの電池容量を減少させる問題を生む。さらに、リチウムは、生産と輸送の過程で水汚染やCO排出などの環境に大きな影響を与えるため、リチウムの使用量を最小限に抑えた安価で実用的な電池の開発が求められている。

同研究では、リチウム箔負極への直接塗布によるコーティングが可能なナノポーラス・ポリマーの開発に成功した。同ポリマーは、ナノメートル(10億分の1メートル)以下の小さな穴を持ち、リチウムイオンの移動を自由にすると同時に、リチウムと副反応を起こす化学物質の移動を防ぐ。

正極に対して負極の重量比が3未満の実用的なLi-S電池を作製し、電池特性を調べた結果、電池の最終容量が637mAh/gという高容量で、250サイクル以上の優れたサイクル特性を示す実用的な性能に到達した。

モナシュ大学のHill教授は、「電気自動車やドローン、電子機器の市場は急成長しており、本研究はその成長を支えることが可能です」と説明した。

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