光の偏光により焦点距離を変えることができるメタレンズを開発 理化学研究所ら

理化学研究所は2023年11月20日、同研究所と台湾大学、成功大学の国際共同研究グループが、光の偏光を変化させるだけで焦点距離を変えることができる、焦点距離可変メタレンズを開発したと発表した。

今回のメタレンズ開発には、特定方向の偏波を持つ光(偏光)にのみ応答する異方的なナノ構造を利用した。このようなナノ構造は、直方体の窒化ガリウム(GaN)で構成されており、横幅や奥行きなどのサイズを変えると、光波が照射された際に位相を変えることができる。さらに、横幅と奥行きが異なる非対称な構造を特定の方位に配列すると、ある方向の偏光だけに位相ずれを与えることができる。

今回の研究では、x方向にのみレンズの形状と同じような位相ずれを与える一方で、y方向にはランダムな位相ずれを与えてレンズとしては機能しないようなメタレンズを設計。これにx偏光を照射すると、レンズ内の位相ずれによって光が焦点距離fxの位置に集光される。さらに、逆にy偏光に対して焦点距離fyを持つメタレンズも設計し、これら2種類のメタレンズを互いに影響し合わないように基板表面に集積化したメタレンズを設計した。

このメタレンズに斜め方向から偏光を入射すると、偏光成分がx方向とy方向に分解され、x方向はfx位置へ、y方向はfy位置へと2つの光スポットが形成される。光強度分布は2つの光スポットの強度を足し合わせたものになるが、その合計された光強度分布の中に元のスポットのピークが現れないようにfxおよびfyの値を設計すると、合計の光スポットはfxとfyの間に1つだけピークを持つ光スポットになる。そして偏光方向をx方向からy方向に回転させると、スポット位置もfxからfyへ連続的に変化する。

今回、膜厚750nmの窒化ガリウム(GaN)層がサファイア(Al2O3)基板の表面に形成された基板を使い、GaN層を電子ビームリソグラフィ法および反応性イオンエッチング法などを用いて形成。2種類のメタレンズを試作した。それらへ偏光方向を変化させた場合の光スポット位置と形状を計測したところ、スポット位置は理論値とほぼ一致しており、スポット形状も常に円形で形状の乱れが発生していないことを確認した。

試作した焦点距離可変メタレンズの構造
(a)メタレンズの電子顕微鏡写真。左下は光学顕微鏡写真
(b)メタレンズの電子顕微鏡写真を拡大したもの

今回の研究により光の偏光を変化させるだけで、高速で焦点位置やズーム率を変化できる超小型のレンズを実現できたことになる。同技術はスマートフォンのカメラや顕微鏡、医療用光学機器などさまざまな分野への適用が可能だ。

関連情報

焦点距離を変えられるメタレンズを開発 | 理化学研究所

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る