- 2023-11-30
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- 5G, CMOS, FFAR(Foundation for Food & Agriculture Research), Hao Wang, IEEE Journal of Solid-State Circuits, Omeed Momeni, カリフォルニア大学デービス校(UC Davis), ドップラーレーダー, バーチャル・リアリティ, マイクロ波, ミリ波レーダー技術, 学術, 赤外線, 超小型センサー
カリフォルニア大学デービス校(UC Davis)の研究チームは、安価でエネルギー効率に優れたセンサーのプロトタイプを作成した。このゴマ粒ほどの超小型センサーは髪の毛の幅よりも小さい微小変位を検出できる。物体の動きをミクロのスケールで検出することができるこの超小型センサーは、セキュリティー、バイオメトリックモニタリング、視覚障害者の支援など、幅広い応用が期待されている。
UC Davisのこのプロジェクトは、電気・コンピューター工学科のOmeed Momeni教授の研究室が主導し、FFAR(Foundation for Food & Agriculture Research)が資金提供する、個々の植物の水の状態を追跡できる低コストセンサーを開発する、進行中のプロジェクトの一環だ。研究成果は、『IEEE Journal of Solid-State Circuits』の2023年9月号に掲載された。
この実証実験装置には、ミリ波レーダー技術が使われている。ミリ波は30~300ギガヘルツの電磁波で、マイクロ波と赤外線の中間に位置する。5Gのような高速通信ネットワークに使用され、短距離のセンシング能力で広く注目されているが、現在開発されているミリ波センサーの多くは、消費電力とバックグラウンド・ノイズのフィルタリングに関する問題に直面している。研究チームは、このノイズの問題を克服するためにセンサーの設計と構造を一新した。
研究チームリーダーで博士課程の学生だったHao Wang氏は、教授とのミーティングで、技術的な制約を回避するためのインスピレーションを得た。ノイズをノイズ自体で打ち消してみてはどうか。Wang氏はまさにそれを実現するための博士論文用のチップ設計を仕上げていた。研究チームはWang氏のアイデアをテストするためのプロトタイプを素早く組み立てた。その試作品は1回目で成功した。
このセンサーは、65nmプロセスCMOSで110mW出力のドップラーレーダーとして、4μmの静的レンジ精度と39nmの振動(10kHz時)レンジ感度を達成した。これは、世界最高レベルのセンサーだ。さらにこのデバイスは製造も簡単で安価であり、ミリ波センサーのエネルギー効率を大幅に向上させる独自の設計を特徴としている。研究チームは、FFARプロジェクト以外では、建物の構造的完全性を検出したり、バーチャル・リアリティ(VR)を改善したりするのに有望だと考えており、大きな可能性を秘めていると信じている。