既設光ファイバーを用いた大容量マルチバンド波長多重伝送技術を開発 富士通ら

富士通は2023年12月4日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」において、KDDI総合研究所と共同開発を行い、既設光ファイバーを用いた大容量マルチバンド波長多重伝送技術の開発に成功したと発表した。

IoTやAI、ビッグデータ解析などを活用した新たなサービスなどの増加により、情報処理の需要が増加している。さらにポスト5G時代ではフィジカル空間(現実空間)とサイバー空間(仮想空間)の完全同期も期待されており、これらを実現するための低遅延で安全、確実な高度なネットワークインフラの確立が必要になる。

これらを踏まえてNEDOは、日本のポスト5G情報通信システムの開発、製造基盤強化を目指している。この一環として富士通とKDDI総合研究所の両社は、NEDOが進めるポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業に取り組んできた。

従来の商用光ファイバー通信網では、光ファイバーの中心部のみ使うシングルモードファイバーを使用して、主にC帯を信号伝送帯としてきた。今回の研究開発では、従来中長距離の商用光通信では使用されていなかったC帯以外の波長帯を、一括波長変換およびマルチバンド増幅技術を活用して伝送する技術を開発した。

富士通は、マルチバンド伝送における伝送性能の劣化要因を考慮したシミュレーションモデルを構築。マルチバンド波長多重システムの伝送設計を可能にした。商用光ファイバー特性の測定結果や一括波長変換器/マルチバンド増幅器の実験系検証により抽出した伝送パラメーターを反映することで、実機測定との誤差を1dB以内に抑える高精度なシミュレーションを実現。これによりバンド帯間の相互作用や伝送性能の劣化を考慮した設計が可能になった。

KDDI総合研究所は、高密度波長分割多重(DWDM)伝送に従来使われることがなかったO帯で、C帯の2倍の周波数帯域幅の活用を可能にした。

両社の技術を組み合わせて、既設の光ファイバーを用いて伝送実験を実施。O帯、S帯、C帯、L帯、U帯でのマルチバンド波長多重伝送(伝送距離45km)を実証した。また、従来のC帯での伝送と比較して波長多重度5.2倍の伝送が可能であることも示した。

既設ファイバー1本におけるO帯、S帯、C帯、L帯、U帯を同時伝送した場合の受信光スペクトル

今回開発した技術により従来の5.2倍の波長多重度で光ファイバーによる伝送が可能になる。また、既設の光ファイバー設備を活用できるので、拡張工事が難しい都市部などでも、コストを抑えながら容易に伝送容量を拡大できるようになる。

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既設光ファイバーを用いた大容量マルチバンド波長多重伝送に成功 : 富士通

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