- 2023-12-19
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- エジプト石油研究所, 光電極, 光電気化学的水分解, 水素製造, 研究, 表面プラズモン共鳴, 豊橋技術科学大学, 酸化亜鉛ナノパゴダ, 銀ナノ粒子
豊橋技術科学大学は2023年12月18日、同大学機能性材料科学研究室とエジプト石油研究所の研究チームが、高い電気化学特性を持つ酸化亜鉛ナノパゴダアレイ光電極を開発したと発表した。
水素製造技術の1つとして、太陽光を利用した光電気化学的水分解の活用が期待されている。同技術でポイントとなる光電極には、太陽光吸収効率や電荷の移動効率の高さ、水分解反応に対する低い過電圧を持つことが求められる。また、レアアースやレアメタルなどを極力使用しないことや、製造プロセスが産業化に適していることも重要だ。
今回の研究では、希少な素材が不要かつ安価で、しかも高い電子伝導性を有する酸化亜鉛ナノパゴダアレイに着目した。同物質は3年前に今回の研究チームメンバーがすでに合成プロセスの最適化に成功し、高い再現性を確保していた。
今回、得られた光電極の光電気化学特性の評価し、疑似太陽光照射下で比較的大きな光電流を得られることが分かった。電磁界解析などの結果、上記の現象は、低欠陥量に伴う高い電荷移動効率や、多くのステップにおける高い表面化学反応活性、さらに、ナノパゴダ特有のナノ構造が入射光の紫外線を効率的に取り込み可能なことが要因となっていることが分かった。
さらに、表面プラズモン共鳴を示す銀ナノ粒子を、酸化亜鉛ナノパゴダ表面に修飾して、光電気化学特性の向上を図ったところ、修飾前と比較して約1.5倍の光電流を得ることができた。これは主に、銀ナノ粒子の表面プラズモン共鳴による可視光吸収によって起こる熱電子移動によるものだ。
酸化亜鉛は光溶解性のため、単体では長時間太陽光照射に耐えられないことから、現在表面修飾による耐久性をテーマに研究を続けている。高い電気化学特性と耐久性の両立が可能になれば、実環境下での水分解水素製造に着手する予定だ。