Bluetoothよりエネルギー効率の高いデバイス間データ伝送手法――低消費電力でバッテリー寿命を改善可能

Bluetoothよりエネルギー効率が高いデバイス間データ伝送方法が開発された。この方法で、より効率的にデバイスを接続でき、バッテリー寿命を向上させることができる。この研究は英サセックス大学を中心とした研究チームによるもので、その詳細は2023年3月13〜17日に開催された国際会議「2023 IEEE International Conference on Pervasive Computing and Communications(PerCom 2023)」で発表された。

現在使用されているBluetooth、Wi-Fi、5Gは、125年以上前に開発された無線技術の一形態である、電磁変調に依存している。19世紀後半には、電磁波を使ってデータを長距離伝送することに関心が集まっていた。

それに対し、電界変調は短距離の電波を使うため、Bluetoothよりも消費電力がはるかに少ない。今回の手法では、電磁波ではなく電波を使用し、数MHzの低周波変調電界を感知することに基づく、容量結合通信となっている。

しかし、電界を介した信頼性の高いOTA(Over The-Air)通信や空中から人体への通信(Air To Body)を可能にすることは、研究上の課題だった。それは、人体の存在が電界通信チャネルの性能に影響を及ぼすためだ。

そこで本研究では、まず空対空(Air To Air)通信システムをベンチマークし、次に受信ノードを人体に装着している場合の、送信ノードと受信ノード間の向きと距離の影響を特定した。

市販のオーバーヘッド型ヘッドホンに受信ノードを組み込んでワイヤレスオーディオシステムを作成し、バイナリ周波数偏移変調(BFSK)デジタルオーディオ信号を復元および復調した。この信号は、送信電極に印加された4.45MHz交流電圧によって生じる、変動する電界を通して送信される。

身体上のさまざまな電極配置と、送信機と受信機の向きに対するチャネルのビット誤り率(BER)性能を計測したところ、このシステムは、サンプルレート16kHz(128kbps)の8ビットモノラルオーディオを、50cmの場合はBER10-6.7未満、75cmの場合はBER10-4未満で伝送できた。

今回開発された手法は、マルチメディアアプリケーションで必要とされる、高いスループットを維持しながら、低消費電力で近距離データ送信を可能にするものだ。私たちはデバイスの近くにいることが多いので、この手法により、ヘッドホンへの音楽ストリーミング配信、通話、フィットネストラッカーの使用、スマートホーム技術との相互作用など、ウェアラブル端末やホームアシスタントのバッテリー寿命を改善できる。

また、この研究により、日常生活での技術利用が進歩し、未来的な応用も幅広く進化する可能性があるという。例えば、この技術を使ったブレスレットを使えば、握手するだけで電話番号を交換できたり、ドアの取っ手に触れるだけでドアの鍵を開けられたりするようになるかもしれない。

さらに、この技術は低コストでもあるため、迅速かつ容易に社会に展開できるという。大量生産すれば、シングルチップに小型化され、デバイス1台あたりのコストはわずか数円となる可能性がある。

研究チームは、この技術を個人デバイス向けに小型化するため、産業界との提携を模索しているという。

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