- 2024-1-24
- 制御・IT系, 技術・スキル市場分析, 転職・キャリアアップ
- AI, C#, ETEC, IoT, ITRON(アイトロン, Java, JSTQB認定テスト技術者資格, OCRES, OS(オペレーティングシステム), VxWorks, アセンブリ言語, コンピューターアーキテクチャ, ハードウェア, ヒューマンマシンインターフェース, ビッグデータ, プログラミング, ロジカルシンキング, 生成AI, 組み込みエンジニア
ここ数年で大きく注目されるようになった分野の中で、特に熱い視線が注がれているのがAIやIoTといった分野です。IT技術を活用して人々の生活を便利にするこれらの分野は、今後大きく飛躍すると期待が寄せられています。そしてこの分野に携わる仕事として「組み込みエンジニア」が今、需要が高いことで注目されています。今回は、組み込みエンジニアの将来性や、転職を成功させるポイントなどを紹介していきます。これを読むと組み込みエンジニアへの転職が一歩も二歩も有利になりますよ。
組み込みエンジニアとは?
組み込みエンジニアとは、家電などがスムーズに動作するように、プログラミングされた制御システムである組み込みソフトウェアを開発する仕事です。組み込みソフトウェアは、エアコンや冷蔵庫といった家電製品から、スマートフォンやカーナビなどの情報通信機器、ならびに産業用ロボットや半導体製造装置など、日々の生活に欠かせない製品に搭載されています。組み込みエンジニアは、陰ながら多くの人々の生活を支えている仕事であるといえます。
組み込みエンジニアの現状と将来性
組み込みエンジニアの現状と将来性はどのようなものなのでしょうか。現状と将来性を知ることで、転職するべきか否かの判断材料となるでしょう。
組み込みエンジニアの現状
組み込みエンジニアの現状として、どの会社でも人材不足と言われています。その要因として、エンジニアの育成機関の少なさが挙げられます。プログラミングスクールでも組み込みエンジニアの範疇とは結びつかないこともあり、人材を育成する場が無いことが人材不足に繋がっているのです。
組み込みエンジニアの年齢分布は、歪んだ構成となっています。30~50代が多く、若手の人材が不足しているのです。これには様々な要因がありますが、不況が長く続いたせいで採用を抑制したこと、新興国との価格競争に耐えるために生産拠点を海外に移したことなどが挙げられます。
組み込みエンジニアの将来性
組み込みエンジニアの将来性に見込みはあるのでしょうか。結論を言うと、かなり有望であると言えます。どのような点で将来性を感じるか確認していきましょう。
AIやIoT需要が高まっている
AIやIoTの需要は年々高まってきており、今後も大きな期待が持てます。AI=人工知能でいえば、生成AIが国策として今後、大きく飛躍する分野として大注目されています。作業の効率化や製品開発支援を目的に、金融・通信分野などで生成AIの利用が進むことが見込まれており、2030年の日本の市場規模は、2023年の15倍の1兆7,774億円になると予測されているのです。
IoT分野でも大きな成長が見込まれています。今までモノとインターネットは繋がりを持っていませんでしたが、今後は密接となり、スマートフォンで家電製品の操作を行う時代がくるでしょう。例えば、外出先から自宅のエアコンの電源を入れたり、温度調節ができたりします。
人手不足のため需要が高い
ITエンジニア全体に言えることですが、慢性的な人手不足であり、需要は旺盛です。それは今後も続く見込みです。組み込みエンジニアでいうと、一番活躍しているのは40~50歳代であり、特に若手社員が不足しており、対応が急がれます。
組み込みエンジニアへ転職するのに必要なスキル・知識
組み込みエンジニアへ転職したい人は必見といえる、組み込みエンジニアに必要なスキルや知識、そして資格を紹介していきます。組み込みエンジニアの採用は、経験やスキル・知識が大変重要視されるのです。
組み込みエンジニアに求められるスキルや知識
組み込みエンジニアへ転職するためには、身に付けておきたいスキルや知識があります。様々なスキルが必要となるので確認しておきましょう。
プログラミングをはじめとする開発スキル
組み込みエンジニアの仕事には、プログラミングをはじめとする開発スキルが欠かせません。組み込みエンジニアはソフトウェアの設計・開発を行うので、「C」や「Java」、「アセンブリ言語」などといったプログラミング言語は習得しておきたいところです。特にC言語は、今後大きな市場となることが期待されるAI開発の基本となるので、身に付けておくと役立つでしょう。
ハードウェアに関する知識
組み込みエンジニアは、ハードウェアの設計や開発にも携わります。それゆえ、電気工学や電子工学に関する知識を得ておく必要があります。ハードウェアとは、主に「電子回路」、「CPU」、「周辺IC」、「電子デバイス」といったところです。業務では回路図をもとにプログラミングを行うため、電子回路図の知識は組み込みエンジニアには必須と言えます。CPUは、組み込みエンジニアが作ったソフトウェアを動作してくれるもので、高性能の新製品がどんどん開発されるので、常に情報収集しておく必要があるでしょう。
コンピューターに関する知識
組み込みエンジニアはコンピューター工学の知識が必要です。特に「コンピューターアーキテクチャ」や「ヒューマンマシンインターフェース」、「OS(オペレーティングシステム)」などは習得しておきたい知識です。
コミュニケーション能力
エンジニアと名前がつくと、いつも機械とにらめっこしているようなイメージがありますが、実際は製品を作り上げるために、人とコミュニケーションを取ることが多い職業です。様々な意見を組み入れたり、意見の中で不必要なものは削ったり、強く提案したりなど、交渉力やプレゼン力などが必要となります。
ロジカルシンキング
組み込みエンジニアは、基本設計やトラブルシューティングなどでロジカルシンキングの能力が求められます。ロジカルシンキングは、物事や事象を原因と結論に分類して、その間のつながりをロジカルに整理する思考パターンのことです。ロジカルシンキングの能力が高まると、ある結果の背景に潜む原因を分析して、最適な解決策に至ることができます。
組み込みエンジニアに求められる資格
組み込みエンジニアとして働くために持っていた方がよい資格を挙げてみました。組み込みエンジニア自体、資格がないとできない仕事ではありませんが、資格を取得すると一定レベルの知識を得ることができ、就職や転職に有利になるでしょう。
ETEC
ETECは、「組込み技術者試験制度」の通称です。一般社団法人組込みシステム技術協会が2006年に始めた試験です。試験は組み込みエンジニア向けで、組み込みシステム分野の専門知識やスキルを持つ技術者の育成や認定を目的としています。試験の内容は、主に組み込みソフトウェアの開発技術者として必要な知識となります。
JSTQB認定テスト技術者資格
JSTQBは日本におけるソフトウェアテスト技術者資格認定の運営組織です。各国のテスト技術者認定組織が参加するISTQBの加盟組織として2005年に認定されました。ISTQBの加盟組織の各国団体は相互認証を行っているため、JSTQB運営のソフトウェアテスト技術者資格は海外でも有効です。資格設立の背景としては、ソフトウェアの信頼性を守るテスト技術の向上のために、テストを行うエンジニアの技術力を測るためです。
OCRES
OCRESは、「OMG認定組込み技術者資格試験」の通称で、組み込みシステムの開発に携わる世界のアーキテクト・開発者・プログラマを対象とした試験です。世界最大のソフトウェア標準化コンソーシアムのOMGが認定する試験で、組み込みシステムソフトウェアの規格である、リアルタイムOS、プログラムおよびデザインの基本原理を網羅しており、取得すればレベルの高さを証明できます。
組み込みエンジニアへの転職を成功させるコツ
組み込みエンジニアへの転職は簡単ではありません。しかも未経験からの転職の場合は難易度が高いです。しかし全く成功しないわけではありません。成功するためのコツを探っていきましょう。
組み込みエンジニアに必要な資格を得る
組み込みエンジニアは知識が必要です。前項でお話したETECやJSTQB、そしてOCRESなどの資格を取得することは、企業への大きなアピール材料となりますし、資格の勉強をすることで知識も自然と身に付くでしょう。
組み込みエンジニアへの評価が高い経験
組み込みエンジニアで採用に繋げるのに強力な武器となる経験が以下の通りです。このような経験があれば、採用側が貴重な戦力として迎え入れてくれる可能性が高まります。
基本設計からデバックまでの一貫した開発経験
基本設計からデバックまで行った開発経験があれば、エンジニアの仕事の中での、すべての工程に携われるエンジニアとして、貴重な戦力とみなされます。効率的に作業が進められることと人件費がかからずに済むので、会社には大きく貢献できます。
リアルタイムOSを利用した開発経験
「ITRON(アイトロン)」や「VxWorks」といった主要なリアルタイムOSに携わった経験があると、採用側に貴重な戦力と評価されます。
アプリケーションなどの開発経験
アプリケーションやファームウェアといった、ハードウェアの構成をもとにした開発の経験は、組み込みエンジニアとして基本的な業務をこなせる人材との評価が得られます。
英語力
英語のデータシートが読めると高い評価を得られます。海外メーカーの電子デバイスなどのデータシートは英語で記されており、正確に読み取る力が必要とされるのです。
組み込みエンジニアへ転職するメリット
組み込みエンジニアへ転職することが有益である由縁を紹介していきます。組み込みエンジニアは時代の先端を走る仕事であり、転職するメリットは心理面での要因が大きいです。
やりがいがある
組み込みエンジニアは非常にやりがいのある仕事です。現代の生活において、家電をはじめ、スマートフォンやタブレットなどは、当たり前に利用していて欠かせないものとなっています。そのような製品を作るために、組み込みエンジニアが必ず携わっているのです。ユーザーの目には見えない部分の作業を行っていますが、影の功労者として、無くてはならない存在となっています。
最新技術に携われる
組み込みエンジニアの仕事は、時代の最先端の技術に携わります。AIやIoTやビッグデータなどといったIT技術は世界中のエンジニアが切磋琢磨して、日々進化を続けているのです。今後も進歩していく分野で、常に新しい情報を取り入れて勉強する姿勢が問われます。その姿勢が進化し続ける技術の源となります。
長期的な活躍が見込める
組み込みエンジニアの仕事は長期的な活躍が見込めます。AIやIoTといった技術は国策として予算が組み込まれるなど、次世代の日本の産業発展を担う分野として期待されているのです。世界的にも市場規模が大きく拡大する見込みがあり、多忙になることも想定されます。組み込みエンジニアはこれらの分野に欠かせない存在です。安定的に需要があることを考えると大変魅力のある仕事です。
組み込みエンジニアへ転職するデメリット
組み込みエンジニアへの転職に関してデメリットは存在します。しかし、これも捉え方次第で豊富な経験を積めるという考え方ができたり、能力の向上ができると考えられ、いちがいにデメリットであるとは言えません。
不具合発生時の対応
組み込みエンジニアの業務で不具合が発生してしまうと、対応に大きな手間と時間を要します。組み込みシステムは常時稼働していることが多いため、即修正というわけにはいきません。
家庭用機器に搭載される組み込みシステムの場合、リコールが起きないように慎重に作業しなければなりません。そして企業や官公庁向け組み込みシステムの場合は、稼働している環境を維持しつつ、品質管理を行わなければなりません。
ストレスがたまりやすい環境にある
組み込みエンジニアはストレスがたまりやすい環境にあります。
例えば、クライアントからの要望に応えなければならない立場なので、最初の要望通りに業務を勧めていても、途中で要望が変更されればその通りに行わなければなりません。その要望は納期にも及びます。スケジュール的にも厳しい納期を強いられる場合があり、残業が続くことがあります。
まとめ
今回は組み込みエンジニアの転職についてお話してきました。組み込みエンジニアは、今後、日本そして世界で大きく飛躍する分野に携わっており、大きな可能性を秘めています。しかし、様々な理由から人材不足となっています。経験がなかったり、知識が乏しかったりすると転職が難しい、と思われていますが、慢性的な人手不足なのでポイントを押さえた対策を立てれば、転職も可能だと思われます。この記事を参考にしていただき、将来有望な組み込みエンジニアとして働いてみませんか?