- 2023-6-6
- 制御・IT系, 技術・スキル市場分析, 機械系, 転職・キャリアアップ, 電気・電子系
- エンジニア, キャリアアドバイザー, センサー, プログラム, マニピュレーター, メイテックネクスト, モビリティ, レベル5(完全自動運転), ロボット, 労働経済動向調査, 労働者過不足判断D.I., 生産技術エンジニア, 自動運転, 電動化, 電気自動車(EV)
少子高齢化による労働人口の減少などによって、日本国内で「人手不足」が深刻化しています。厚生労働省が発表している「労働経済動向調査(令和5年2月)」の「労働者の過不足状況」を見ると、製造業においては労働者過不足判断D.I.(不足と回答した事業所の割合から過剰と回答した事業所の割合を差し引いた値)が43ポイントになるなど、人手不足の傾向が顕著です。
こうした人手不足を背景として、製造業各社も人材獲得に力を入れています。今回は、エンジニア専門の転職支援会社メイテックネクストのキャリアアドバイザー3名に、それぞれが注目している業界の転職市場動向や、求められる人材像、技術ニーズなどを取材しました。第2回は、「モビリティ」と「ロボット」です。(執筆・撮影:編集部)
<プロフィール>
メイテックネクスト コンサルタント 熊谷 英治(くまがい えいじ)さん
学生時代に機械システム工学を専攻。卒業後は精密機械メーカーで生産技術として国内外で11年勤務後、 エンジニア特化の転職支援会社メイテックネクストに入社。キャリアドバイザー暦11年。機械系、プラント系のエンジニアを中心に3,500人以上のキャリア相談実績を持つ。専門は機械・メカトロ分野。相談者の技術経験を分解し、強みや希望を明確にして、異業界を含めたキャリアナビゲーションを実施。応募後の面接対策、条件交渉も柔軟に対応するなど、転職支援のトータルサポートを得意としている。
モビリティの2大キーワードは、「電動化」と「自動運転」
自動車メーカーは「電動化」を優先。完全自動運転は未だ研究段階
昨今のモビリティ業界におけるキーワードは、「電動化」と「自動運転」の2つです。しかし、現段階では自動車メーカーが注力しているのは「電動化」の方になるでしょう。電動化は運転の主体が人であることから新たに法律を整備する必要がなく、世界共通の課題であるカーボンニュートラル実現にも寄与できるため、各社は電気自動車(EV)をいかに早く市場に送りだすかという点に取り組む傾向が見られます。
一方、自動運転は人が直接運転をしないため法律を整備する必要があり、日本の天候や地形が複雑で、車の周辺状況を正確に認識することが技術的に難しいといった課題があります。5年後、10年後を見据えて、ソフトウェアエンジニアが中心となって、位置特定、認識、通信、予測、データ処理などの技術開発が進められていますが、現時点でレベル5(完全自動運転)が市場に出てくる段階にはありません。
「電動化」が進む中、機械系エンジニアが注目すべき技術は?
電動化と自動運転の流れの中で、自動車はソフトウェアが占める割合が増え、電気・IT・ソフトウェア系エンジニアの需要が高まっています。その反面、動力がガソリンから電気になることで、機械系エンジニアが技術力を発揮することが難しくなってきています。ここでは、機械系エンジニアに焦点を当て、今後モビリティの領域に関わっていくための、必要知識や注目技術をお伝えしたいと思います。
一つ目は、EVの動力源となる高価で重量のあるバッテリーをより多く搭載するために、他の部分を軽量化する技術です。例えば、車体を軽量化しても安全性を損なわないための設計手法や材料の選定、衝撃実験や強度解析などが挙げられます。こうした軽量化の領域では機械系エンジニアの需要があります。
二つ目は、車内の空調効率を向上させる流体コントロールや、モーターの性能を維持するための熱をコントロールする、熱マネジメントの技術です。自動車の空調やモーター、バッテリーは高温になると性能が変化してしまうので、性能を維持するために必要となる熱のコントロールができる人材も企業から求められています。ガソリン車からEVになることで変化するニーズを想像することが、機械系エンジニアにとって重要です。
ロボットの領域における注目キーワードは「省人化・自動化」
省人化・自動化を実現できる生産技術エンジニアのニーズが多い
少子高齢化による労働人口の減少や、コロナ禍、円安による外国人労働者の不足によって、製造業各社において、工場の省人化、自動化は急務となっています。大企業であっても、導入した産業用ロボットを効率良く扱うことに課題感を持っていることが多く、工場へのロボットの導入や生産ラインの自動化を経験している生産技術エンジニアはニーズが高いですね。
ロボットの設計開発で重要となる3つの技術とは?
ロボットそのものの設計・開発をする求人も勿論ありますが、業務に就くために必要な技術があります。一つは、機械・機構知識を用いたマニピュレーターの設計。二つ目が、モノを掴んだり、動かすために必要となるセンサーの知識。最後にロボットを動かして評価するために必要となる制御の知識です。
機械系エンジニアであれば、これら3つ全ての技術・知識がなければ、自分で設計したロボットを評価することができないので、ロボットの業務に関わることは相当難しくなると思います。もし、職場にロボットを扱えるような環境があれば積極的に活用して頂き、自らロボットを動かしてみると、実際に製品を担当した場合、設計して評価するためには何の知識が必要なのかイメージが持てるかと思います。大学で機械系の学科で学ばれた方は、ロボットでなくても実習や研究などで装置を動かすために、簡単なプログラムを組んだりした経験があると思いますので、基礎知識は持っているハズです。そうした経験を思い出しながら、実際のモノに触れることで知識を蓄えることが、業務に就くための一番の近道ではないでしょうか。
取材協力
エンジニア専門の転職支援会社
メイテックネクスト