アミド結合の導入で非水素結合系「超分子液晶」を作製 東工大など研究グループ

東京工業大学は2024年1月26日、大阪公立大学との研究グループが、光/電子機能を有する棒状の有機π電子系分子に、カルボン酸とアミンの脱水縮合によって形成される「アミド結合」を導入することで、100℃程度で液晶相が発現する非水素結合系超分子液晶の作製に成功したと発表した。この超分子液晶は、秩序構造を保ったまま大面積に塗布することもでき、簡便な電子デバイス開発など、新たな有機エレクトロニクスの開発につながると期待される。

研究グループは超分子液晶の新しい可能性を探るため、これまで棒状液晶に利用されることの少なかった極性官能基が示す、分子間相互作用を利用した秩序構造の形成と液晶性の発現を目指した。

その中で、電子吸引性によりπ電子系分子に光/電子機能を付与でき、シス型、トランス型の異なるコンフォメーションを持つ3級アミドに着目。さまざまな長さの棒状の分子骨格の末端に3級アミドを導入したL字形状の分子を合成し、フェニルトラン骨格を有するPTA-groupが、秩序性の高い液晶(スメクチックB相)を示すことを確認した。

こうして得られた液晶の構造を解析したところ、液晶の広角X線回折測定と単結晶のX線構造解析から、固体状態から液体状態でL字型分子が共有結合を介さずに超分子的に二量体を形成し、それらが六方晶状に配列していることが分かった。

しかし、液晶と結晶ではユニット間の距離や六方晶の長軸の長さに違いが見られたため、さらに温度可変赤外分光法を用いてアミド結合を観察。その結果、固体状態ではシス型であるが、液晶状態ではシス型とトランス型が共存しており、シス-トランス異性化が常時起こっていることが分かった。これらの結果と量子化学計算から、L字型分子の二量体が秩序構造(結晶形)を構築し、アミド結合がシス-トランス異性化を起すことで系全体に運動性を付与して液晶性を発現することを明らかにした。

さらにPTA-groupの物性や機能を詳しく調べたところ、PTA-groupの二量体とその集合体は、消光を起さず高い量子収率(54%)を示した。また、PTA-groupの1つはネマチック相を発現し、高い複屈折率(Δn = 0.30)を示した。このような高複屈折材料としての特徴を持つPTA-groupは、光学フィルムとして有用だと考えられる。

液晶や結晶の構造はさまざまな熱力学的なパラメーターに支配され、分子設計の段階でその構造を予測することが難しい。その打開策の1つとして、あらかじめ2つ以上の分子を会合させて(超分子)、そのブロックから液晶構造(秩序構造)を構築する超分子液晶が利用されている。しかし、これまで報告されている超分子液晶の多くは、水素結合のような強い相互作用と結合の方向性を持つものに限られ、構造の多様性が十分とはいえなかった。

その点、今回作製された超分子液晶は非水素結合系で、研究グループは液晶の多様性を拡張するものであり、有機エレクトロニクスの実装に向けて重要な成果だとしている。

研究グループでは今後、今回の成果を基にさまざまなπ電子系分子を用いた機能開発を進めるとともに、より高次な構造の構築や新しい超分子液晶のシステムの追究に取り組む。

今回の研究成果は2024年1月23日、凝集体の科学を扱う専門誌「Aggregate(アグリゲート)」オンライン版に掲載された。

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アミドの導入による非水素結合系「超分子液晶」の作製に成功 大面積に塗布可能な新規超分子液晶による有機エレクトロニクスの開発に期待 | 東工大ニュース | 東京工業大学

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