胎児期の有機フッ素化合物「PFAS」への曝露で、7歳時のIQがわずかに低下するという研究

昨今日本各地の河川などからも検出が報告されている有機フッ素化合物「PFAS」。主に発がん性などの健康被害が懸念されているが、南デンマーク大学が胎児期のPFASへの曝露と7歳時の知能指数(IQ)の関連性について、研究結果を発表している。

PFASは有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物の総称で、1万種類以上の物質があるとされている。中でも、PFOSおよびPFOAは幅広い用途で使用されてきたが、動物実験では肝臓の機能や動物の子供の体重減少への影響、人においてはコレステロール値の上昇、発がん、免疫系などとの関連が報告されている。現在では国際的な条約により廃絶の対象とされているが、難分解性、高蓄積性、長距離移動性という性質があるため、その除去は容易ではない。

2023年に発表された南デンマーク大学の研究では967人の妊婦とその子供を対象に、胎児期~乳幼児期におけるPFASへの曝露が脳の発達に与える影響を調査。胎児期においては胎盤を介してPFASが胎児に移行すると考えられるが、妊娠中の母親の血中PFAS濃度が高かった場合、7歳時のIQにわずかな低下が認められたという。このIQの低下は個々の児童には影響がないほど軽微なものだが、人口全体としてIQが低下すれば、例えわずかであっても社会に重大な影響をもたらすと研究者らは危惧する。

一方、乳幼児期の子どもにおける調査ではPFASへの曝露とIQに有意な関連性は見られなかったという。最初の分析では予想外にも生後18カ月時の血中PFAS濃度が高いほど、7歳時点でのIQが高いという結果が出たが、母乳育児のIQへの有益な効果を考慮すると、この関連性は否定された。乳幼児期は主に母乳を介してPFASへの曝露が発生すると考えられるが、母乳育児の効果とPFASの影響を区別するのは容易ではない。

現在、南デンマーク大学では5歳時点の血中PFAS濃度の測定を行い、出生後の子どもにおけるPFASへの曝露がIQに及ぼす影響を調査しているという。

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Researchers find link between PFAS and children’s IQ

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