- 2024-7-12
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横浜国立大学は2024年7月11日、同大学の研究グループが、高解像で低コスト、安定な流体計算法を考案したと発表した。航空宇宙工学や流体工学での応用が期待される。
航空宇宙工学や流体工学では、複雑な流体現象を正しくシミュレーションする技術が求められている。航空機やロケット、タービンなどで生じる圧縮性流体と呼ばれる流れでは、衝撃波と呼ばれる現象が発生する。衝撃波は不連続な特性を有しており、数値解析において特異点となる。散逸誤差や計算の破綻の原因となり、シミュレーションの信頼性を損なうことが課題となっていた。
同研究グループは、空間二次精度と呼ばれる手法では、弱い衝撃波を過剰に散逸して解いてしまうこと、一方で不連続的な部分に対して不連続性を保つ処理を施す手法では、強い衝撃波で数値振動と呼ばれる誤差を示すことを明らかにし、これらの手法を組み合わせる方法を考案した。
具体的には、弱い衝撃波には積極的に不連続性を保つ処理を施し、強い衝撃波には特別な処理を施さない計算手法を設計している。
ベンチマークテストにより検証したところ、さまざまな問題で今回考案した手法の有効性が確認された。冒頭の画像は、同テストの結果を示したものだ。
問題1が超音速流れに置いた鈍頭物体前方に生じる衝撃波を定常計算する問題、問題2が衝撃波が壁で反射する現象を非定常計算する問題となっており、いずれも安定した計算結果を示している。
今回の計算法は、衝撃波が生じる多くの流体現象における利用が期待される。例えば、航空機では、主翼上で流れが加速して衝撃波が生じ、その後不安定な振動が起こる「遷音速バフェット現象」への応用が想定される。
同現象は、主翼への構造負荷や航行効率悪化の要因となるため、数値解析による適正な予測が望まれていた。現象が複雑なため、数値解析が困難だったが、今回の手法を応用することで同現象の再現、理解が進むことが期待される。