ASICとは?FPGAとの違いを踏まえつつ解説。半導体集積回路に詳しくなろう

家電製品や自動車など、私たちの身の回りにあるさまざまな製品に半導体集積回路が使われています。

しかし、半導体集積回路という言葉は見聞きしたことがあっても、ASICやFPGAなど、種類まで詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。それぞれ特徴が違うため、エンジニアは製品に応じてASICやFPGAを選択する必要があります。

この記事ではASICを軸に、その概要やよく使用されるケース、FPGAとの違いなどを解説します。どうぞご覧ください。

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【目次】

ASICとは

ASICについて、以下の2点に分けて解説します。

• ASICは半導体集積回路の一種
• ASICがよく使用されるケース

それぞれ見ていきましょう。

ASICは半導体集積回路の一種

ASICとは「Application Specific Integrated Circuit」の略称で、半導体集積回路の一種です。日本語に訳すと「特定用途向け集積回路」で、「エーシック」と発音します。

ASICは「特定用途向け」とあるように、特定の機能に特化した集積回路です。必要な機能だけをカスタマイズした回路を設計するため、標準的な集積回路よりも動作が高速です。処理能力が高いだけでなく、省電力や省スペースの点でも優れています。

そのようなメリットがある反面、開発期間が長くなり、人件費をはじめとする開発コストが高くなりがちです。仕様変更や修正に対応しにくいデメリットもあります。

また、ASICは「フルカスタムIC」と「セミカスタムIC」に大別されます。クライアントの要求に応じてゼロから回路を設計するのがフルカスタムICで、標準化された回路や機能ブロックを組み合わせて設計するのがセミカスタムICです。

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ASICがよく使用されるケース

ASICはカスタマイズした回路を設計するため、開発コストが高くなります。しかし、必要最低限の構成にできるため、チップ1枚当たりの部品コストを抑えられます。そのため、大量生産されるテレビやパソコン、プリンター、タブレット、スマートフォン、ゲーム機などのコンシューマーエレクトロニクス分野でよく使用されます。

自動車分野での需要も高く、電気自動車のバッテリーマネジメントシステムやモータードライブシステムなどのほか、センサーからのリアルタイムデータを高速処理しなければならない、ADAS(先進運転支援システム)などでも使われています。

医療分野でもMRIやCTスキャナー、手術用ロボットなどは、大量のデータを高速処理する必要があるため、ASICがよく使用されています。省電力が求められる携帯型の心電計や血糖値測定器などにも搭載されています。

また、高度な暗号化や認証にも対応できるため、ICカードなどのセキュリティ分野でも活用されています。

FPGAとの違い

ASICへの理解を深めるために、FPGAも取り上げて解説します。

• そもそもFPGAとは
• ASICとの違い

それぞれ見ていきましょう。

そもそもFPGAとは

FPGAとは「Field Programmable Gate Array」の略称で、製造後でも回路の設計変更ができる集積回路です。PLD(Programmable Logic Device)の一つとされ、ハードウェアでありながら、論理回路(Gate)を現場(Field)でプログラミングできる(Programmable)ソフトウェア的な性質を持ちます。

並列処理能力に優れるFPGA は、ASICと同じくデータを高速で処理できます。画像処理や通信システム、データ分析などの分野でよく使用されます。また、必要な回路だけをプログラミングすることで消費電力を抑えられるため、ASICと同様に省電力が求められる携帯型のデバイスにも適します。

ASICとの違い

ASICとFPGAの違いを一覧にしました。

ASIC FPGA
開発期間
開発コスト
柔軟性
性能
消費電力
部品コスト
部品サイズ

以下の3つに分けて解説します。

• 開発期間やコスト、柔軟性
• 性能や消費電力
• 部品のコストやサイズ

それぞれ見ていきましょう。

開発期間やコスト、柔軟性

ASICはカスタマイズした回路を設計するため、開発期間が長くなりがちです。その分、人件費がかかるため、開発コストも高くなる傾向にあります。一方、FPGAは論理ブロックを組み合わせてプログラミングできるため、開発期間を短縮できます。

また、ASICは論理設計だけでなくレイアウト設計も必要で、コストのかかるフォトマスクを作成しなければなりません。仕様変更が発生した場合、フォトマスクも再作成する必要があるため大きなロスが生じます。その点、FPGAはフォトマスク不要で、仕様変更に対してもプログラム変更のみで柔軟に対応できます。

性能や消費電力

ASICもFPGAも共に性能が高く、消費電力を抑えられます。しかし、ASICは特定用途に対して完全なカスタマイズが可能なため、FPGAより高いパフォーマンスを発揮しながら、消費電力を最小限に抑える設計ができます。

FPGAも必要な回路だけをプログラミングできるため、消費電力を抑えることは可能です。しかしASICに比べると、微細化や冗長回路によるリーク電流が大きくなる傾向があります。

部品のコストやサイズ

ASICは必要最低限の構成で設計できるため、部品コストやサイズを最小限に抑えられます。一方、FPGAは柔軟性を高く保つため、必要のない構成も部品に含まれてしまいます。その分、部品コストやサイズは大きくなります。

まとめ

ASICの概要やよく使用されるケース、FPGAとの違いなどを解説しました。

ASICとFPGAは、どちらも高い処理能力を持ちます。しかし、開発コストや部品コスト、柔軟性などに関する特徴は真逆です。ASICは完全なカスタマイズができること、FPGAは柔軟性の高いプログラミングができることがメリットである反面、それがデメリットにもつながります。

それぞれの特徴をしっかり把握し、用途に応じて適切な選択することが重要となります。

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ライタープロフィール

fabcross for エンジニア 編集部

現役エンジニアやエンジニアを目指す学生の皆さんに向けて、日々の業務やキャリア形成に役立つ情報をお届けします。


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