活性炭のスポンジを使い、大気から直接二酸化炭素を回収する安価なプロセスを考案 英ケンブリッジ大

イギリス・ケンブリッジ大学の研究チームが、空気中の二酸化炭素を直接回収できる、シンプルで低コストかつエネルギー効率の高い方法を考案した。研究成果は2024年6月5日、『Nature』に掲載された。

この方法は、家庭用浄水器によく使われる活性炭を用いるもので、蓄電池を充電するように活性炭を充電する。活性炭をスポンジ状にしたものを使い、それを二酸化炭素と可逆的に結合する水酸化物イオンで帯電させることで、空気中から直接、二酸化炭素を回収することに成功した。

スポンジのような多孔質材料を使って大気中の二酸化炭素を直接回収する手法は、これまでも有効性が指摘されていた。しかし従来のアプローチには、天然ガスを用いるなどして材料を900℃という高温に加熱する必要があり、高コストで安定性に欠けるという欠点があった。

研究チームが考案した手法では、安価で、安定して大量に製造できる活性炭を用いる。活性炭は浄水フィルターなどに広く用いられている素材だが、一般的に大気中の二酸化炭素を回収し貯留するものではない。しかし研究者らは活性炭を蓄電池のように帯電させることができれば、二酸化炭素の回収に適した材料になるだろうと考えた。

電池を充電すると、電荷を帯びたイオンが電池の電極の一方に挿入される。研究チームは、活性炭を水酸化物イオンによって帯電させることで、炭素を捕捉できるのではないかという仮説を立てた。水酸化物は二酸化炭素と可逆的な結合を形成するからだ。

研究チームは、電池のような蓄電プロセスにより、安価な活性炭クロスを水酸化物イオンで充電した。ここでは活性炭クロスが電池で使われる炭素電極のように機能し、水酸化物イオンは活性炭の細孔内に集積する。蓄電プロセスの最後に、活性炭は電池から取り出され、洗浄と乾燥が行われる。

帯電させた活性炭スポンジを使った試験では、水酸化物の結合メカニズムにより、空気中の二酸化炭素を直接回収することに成功した。活性炭スポンジを再生して保管するためには、水酸化物と二酸化炭素の結合を切る必要があるが、研究チームが開発したこの活性炭スポンジは、90~100℃に加熱すればよい。電気抵抗により発熱させる抵抗加熱を使い、材料の内側から外側へと素早く加熱されるため、エネルギー効率が高い。天然ガスで900℃に加熱する必要がなく、加熱には再生可能エネルギーが利用できる。

活性炭スポンジには、高湿度の条件下では吸着性能が低下するという制限があることがわかっているが、研究者たちは回収できる二酸化炭素量を増やす方法を検討中だという。また、この活性炭を利用するアプローチは、活性炭の細孔や細孔内に集積させるイオンを調整することで、二酸化炭素以外のさまざまな分子の回収も可能だとしている。

関連情報

Electrified charcoal ‘sponge’ can soak up CO2 directly from the air | University of Cambridge

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