ナノクラスター銅触媒を使って、二酸化炭素をクリーンなエネルギーに変換する手法を考案

Canadian Light Source/YouTube

カナダのマギル大学の研究チームが、微細な銅のナノクラスターを電解触媒として用いることにより、二酸化炭素(CO2)をクリーンエネルギーであるメタン(CH4)に効率的に変換する手法を考案した。さらに、生成したCH4を燃料として使用する際に発生するCO2を、リサイクルして再度CH4に変換する「カーボン閉鎖ループ」の構築も提案し、気候変動を抑制する有効な対策として期待している。研究成果が、『Applied Catalysis B:Environment and Energy』誌の2024年9月号に公開されている。

気候変動の主要因である大気中のCO2の削減に向けて、さまざまな取り組みが世界規模で行われている。例えば火力発電所や製鉄所、製油所などから排出されるCO2を回収した後、固定化して地中深くに貯蔵する、または有益な化学物質に変換して再利用する方法が幅広く探索されている。特に、CO2をH2との熱化学反応などにより、天然ガスの主成分として輸送や貯蔵、燃焼のインフラ設備が広く確立しているCH4に変換する技術開発が活発に研究されている。研究チームは、CO2の電気化学的還元反応により、CH4を製造する検討を行ってきたが、還元反応ではCH4以外のエチレン(C2H4)やエタン(C2H6)などの多炭素系の炭化水素も同時に生成され、選択的に効率良くCH4を生成することが難しいという問題があった。

研究チームは、国立シンクロトロン光源施設Canadian Light SourceにおけるX線吸収分光、および量子力学的シミュレーション計算などを活用して、ナノクラスター銅の表面結晶構造を詳細に調べることにより、ナノクラスター銅触媒を用いた電解反応メカニズムに対するナノクラスター銅のサイズと構造の影響を調べた。19原子で構成される小さなものから、1000原子の大きなものまで、さまざまなサイズのナノクラスター銅触媒を検討した結果、極めて小さなサイズのナノクラスター銅が、選択的にCH4を生成する上で非常に効果的であることを見いだした。
ナノクラスター銅のサイズの制御により、電解還元反応においてファラデー効率85%、電流密度1.5A/cm2を達成し、また10時間以上の安定性も実現した。

「晴れている日には太陽光発電で、風の強い日には風力発電で、再生可能な電気を発電できるが、発電した電気は直ちに使用する必要がある。我々が考案した高効率CH4生成技術を使えば、大気中のCO2をCH4に変換できるだけでなく、再生可能発電による電気エネルギーをCH4という化学物質にエネルギーとして貯蔵できる」と、研究チームは語る。また、CH4がエネルギー源として燃焼されるときに放出されるCO2を再度捕捉してメタンにリサイクルし、大気中に新しいCO2を全く放出しない「カーボン閉鎖ループ」を構築できる。研究チームは、ナノクラスター銅触媒をもっと効率的にする研究とともに、大規模な工業化の検討にも取り組む計画である。これによって、真にクリーンで持続可能なエネルギー源をエンドレスに創出できる道を開けると期待している。

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