- 2024-8-8
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- Nature, サファイア微粒子, マサチューセッツ工科大学(MIT), 学術, 強化, 熱, 衝撃, 配列秩序, 金属原子, 金属現象
マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、極端な衝撃により熱で強化される金属現象を発見した。同発見は、宇宙船や極超音速航空機のシールド、高速製造作業の高度な装置など、極限環境用の材料設計の可能性を広げるという。同研究成果は2024年5月22日、『Nature』誌に掲載された。
研究チームは、金属板に銅とチタン、金の3種類を使用して、10μm程度のサファイア微粒子を秒速数百mで金属板に照射し、衝突した微粒子のふるまいを超高速度カメラで観測した。金属表面で跳ね返る微粒子の速度変化を測定し、金属板に伝達されたエネルギーを計算した。
20℃、100℃、177℃と異なる温度で実験した結果、温度が上昇するほど、サファイア粒子はより強く反発して跳ね返り、金属強度が増した。金属が高速で移動する物体により極端な速度で変形する場合、高温で弱くなるのではなく、強度が増した。温度が上がるにつれて効果は強まり、極度のストレスがかかる条件下では、さらに金属として非常に軟らかいとされる銅が、衝撃により鋼鉄と同等の強度を持つようになった。
加熱により強度を増す熱効果については以前から報告されていたが、今回の実験が初めての直接的な実証データとなる。熱効果は金属原子の移動による配列秩序に起因すると研究チームは考察している。
同発見は、過度の圧力にさらされる部品や装置を設計する際の材料選択に影響を与えるという。例えば、通常は弱いとされる金属でも、より安価で加工が容易であれば、これまで使用されなかった機会での選択肢になる可能性がある。