産業技術総合研究所(産総研)は2024年10月3日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や科学技術振興機構(JST)との研究グループが、ゼオライトの基本構造をあらかじめ配列させて組み上げる新たな合成手法を開発し、その詳細な構造を明らかにしたと発表した。
産総研はこれまで、シリカ(SiO2)の基本単位であるオルトケイ酸(Si(OH)4)をはじめ、その2量体、環状3量体、環状4量体、オルトケイ酸のかご型8量体(Q8H8)、かご型12量体(Q12H12)を合成/単離する技術を開発。さらに最近はQ8H8の8個の頂点に放射状に存在するヒドロキシ基に着目し、水素結合させることでQ8H8が1次元、2次元、3次元状にネットワークを構築する「水素結合性無機構造体(Hydrogen-bonded Inorganic Framework: HIF)」を開発している。
研究グループは今回、このHIF結晶を基本的なブロックとして結晶性を維持して脱水縮合すれば、従来よりも合理的なゼオライト合成法を開発できると着想した。そこで、Q12H12からなるHIF結晶の結晶性を維持しながら脱水縮合が可能なプロセスを発見し、新たなゼオライト合成手法を開発した。
合成したゼオライトは新規骨格を形成しており、UPZ-1(Unit-Preorganized Zeolite)と命名した。
開発した合成法では、酸性条件による脱水縮合の後に高温加熱を行う。HIF結晶に対して、前段の反応では酢酸を溶媒とし、反応の促進剤としてアミンまたはアンモニウム塩を触媒量加えたうえで、140℃で加熱する。これによって部分的な脱水縮合を促進させ、得られた中間体をさらに750℃で加熱すると脱水縮合が完全に進行し、ゼオライト(UPZ-1)が合成される。
光学顕微鏡で観察したところ、得られたUPZ-1は約80μmとゼオライトとしては極めて大きな結晶であり、出発原料として用いたHIF結晶と同様の結晶外形だった。また、単結晶X線構造解析などでUPZ-1と出発原料のHIF結晶を比較したところ、HIF結晶中の水素結合で構成されていたケイ素4員環とケイ素8員環の水素結合の部位が、UPZ-1ではQ12H12の配列を維持したままシロキサン結合に変化していた。
新たな合成手法について産総研は、さまざまなニーズに最適化されたゼオライトを開発するための手法となり、高機能かつ高性能な触媒や分子ふるいなどの開発に応用できると期待を寄せている。ゼオライトを触媒や分子ふるいとして利用するには、高い耐熱性や反応に適した細孔サイズが求められるため、今後は多彩なHIF結晶を作成し、さまざまなニーズに対応した高機能なゼオライトの合成を目指す。
今回の成果の詳細は同月3日、米国の学術誌『Chemistry of Materials』に掲載された。