核融合装置を自宅で自作――学生がAIと友人たちの協力によって4週間でプラズマを生成

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カナダのウォータールー大学で数学を専攻するHudZah氏は2024年8月24日、自身の寝室で核融合装置を構築し、プラズマを生成したとX(旧Twitter)に投稿した。ハードウェアの組み立てや回路設計の経験がまったくない中、Anthropicの生成AI「Claude 3.5 Sonnet」と友人たちの支援を得て、たった4週間でこのプロジェクトを成し遂げた。Claude 3.5 Sonnetについては、PDFなどをAIの知識源としてアップロードできる「Projects」機能を活用した。

HudZah氏は、Olivia Li氏の「ニューヨークのアパートの6階に核融合炉を構築する」プロジェクトに影響を受けている。Li氏が目指したのは静電核融合炉で、静電場を使ってイオン(ここでは重水素)を中心点に向かって加速し、そこで衝突させて融合させるというものだ。その組み立てには、高真空、高電圧、重水素ガス源が必要となる。真空にすることで背景粒子との衝突を減らし、イオンが核融合に十分なエネルギーに達することを可能にする。高電圧によって、原子核が融合するのに十分なエネルギーでイオンを加速する静電場を作る。重水素は通常、これらの核融合反応の燃料として機能する。

HudZah氏の製作工程について、1週目は、必要な部品と設計を決めることから始まった。利用したのは機械部品や工具などを販売するアメリカの大手サプライヤーのMcMaster-Carrだ。

2週目にパーツが到着すると、メインチャンバーの設計とハーフブリッジ整流器の製作に着手した。整流器は、交流を直流に変換するための回路であり、特にプラズマを生成するような高電圧を扱う際に使用される。

3週目には、寝室でシステムのセットアップを始めた。ネオンサイン変圧器(NST)はネオンサインに電力を供給するためのもので、高電圧でネオンやアルゴンなどの気体を放電、発光させる。核融合炉でプラズマを生成するための高電圧電源として重要だ。HudZah氏はNSTを利用して高電圧回路を構築しようと模索した。マルチメーターを持っていなかったため、代わりにArduinoを使って回路の導通を確認した。

その後、Li氏と同様にMKS Instruments製の「MKS 901P」という真空計を使用して、真空状態を達成しているかを測定するシステムを構築した。Claudeに各部品のデータシートを読み込ませたという。

プロジェクトを通して最も厄介だったのは、この真空状態の構築だったという。真空状態を作るためには装置内部の圧力を極限まで下げる必要があるが、いくつかの真空漏れを突き止めるのに1週間かかったが、最終的には25ミクロン(約3.3Pa)という低圧まで下げることができた。

そして4週目、彼は適切なNSTを探し出すため、街中のネオンサイン店に電話をかけた。最終的に12kVのNSTを入手し、その日のうちにプラズマの生成に成功した。HudZah氏は今後、プラズマを制御し、核融合反応を起こすことにも意欲を見せている。

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