「ハードウェアからソフトウェア」への時代の変化を感じ取り、ECU設計からITインフラ開発へのキャリアチェンジを実現──SCSK渡邉 泰之氏

SCSK株式会社(以下、SCSK)は、コンサルティング、システム開発、検証サービス、IT インフラ構築、IT マネジメント、ITハード・ソフト販売、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)など、B2B向けのITサービスをフルラインアップで提供するシステムインテグレーターだ。

モビリティ領域のシステム開発では、前身であるCSK株式会社から40年以上の経験と実績があり、2023年7月には本田技研工業株式会社と「ソフトウェア開発領域における戦略的パートナーシップに関する契約の覚書」を締結。SDM(Software Defined Mobility)時代の到来に向けて、2030年に国内で1000人を超える規模のモビリティエンジニア体制を構築することを発表している。

今回ご登場いただく渡邉 泰之氏は、その体制強化の先鋒の一人として、2023年7月にSCSKへ転職し、同社モビリティ事業グループ モビリティシステム第一事業本部に配属され、車載ECUのテスト環境構築プロジェクトに携わっている。素材メーカーに新卒で入社し、電子系エンジニアとしてキャリアを積んできた渡邉氏が、SCSKへの転職を決意した経緯、エンジニアとして未経験の領域にチャレンジする心構え、仕事のやりがいなどについて、お話を伺った。(執筆:後藤銀河 撮影:編集部)

電気系エンジニアとしてキャリアをスタート

――はじめにご自身がエンジニアを目指そうと思ったきっかけや、これまでエンジニアとして歩まれたキャリアについて、ご紹介いただけますか?

[渡邉氏]私は小学生の頃から機械を分解して、また組み立てたりするのが好きだったので、いつかはエンジニアになりたいという思いがありました。大学は電気電子工学科で電気電子システムを専攻したので、エンジニアとしては電気系の出身になります。新卒で就職した会社は素材系のメーカーで、そこには工場を建設するようなプラントエンジニアリングの部門や、自動車部品を開発する関連会社などがあることは知っていました。

学生の頃はエンジニアと言えば自動車の整備士や機械を扱うイメージがあり、製造業に就職してエンジニアとして仕事をすることに、具体的なイメージができていませんでした。そうした背景もあり、この素材メーカーには、大きな工場を建設したり、細かな部品を設計したりする部門があって、さまざまな選択肢があるところに魅力を感じて入社することにしました。

――ご経歴を拝見したところ、自動車部品を取り扱う会社に出向とありましたが、まさにその選択肢の一つを選ばれたということですね。前職では具体的にどのような業務を担当されていましたか?

[渡邉氏]私が担当したのは自動車の電動ドアシステムの開発でした。自動車部品を開発する部品メーカーで機械が事業の中心だったので、システム開発自体が機械を売るためにECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)を開発している、という位置付けでした。

自動車に関わる部品開発を続けていたのですが、そのうち世の中の流れがハードウェアからソフトウェア中心に変わりつつあると感じ始めました。私は電気系出身なので、元々はハードウェアの方が得意だったのですが、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)のように、車両を販売した後に制御システムも更新できるようになってくると、ソフトウェアありきでものづくりが進んでいくのだろうと考え、それならば今後はソフトウェアの領域に携わっていきたい、とキャリアチェンジを決意したのです。そして、2023年7月にSCSKに転職することにしました。

ハード中心からソフト中心へ、価値観の変化を痛感したことが転職のきっかけに

――前職の時に、自動車の開発がハードウェア中心からソフトウェア重視へと変わりつつあると実感されたのが、転職という道を選択されたきっかけになったということですね。電気系でハードウェアが得意だったということですが、前職ではソフトウェア開発のご経験はありましたか?

[渡邉氏]部品設計として機械設計者とECU設計者がいて、私はECU設計を担当していました。その中では割と上流寄りのハードウェアとソフトウェアの間のシステム設計を担当していたので、ソフトウェアへの要求仕様を考えていましたが、ソフトウェアの開発自体にはあまり触れていませんでした。

――システム設計をご担当されていて、よりソフトウェアに軸足を置こうと決心されて転職されたということだと思いますが、実際にSCSKへ転職されてみていかがでしたか?

[渡邉氏]想像していたことと実際は全く違っていましたね(笑)。面接時にモビリティ事業に配属になることは聞いていて、自分としては車両開発やECU設計の経験を活かして、モビリティ関係の車載ECUの組み込み開発を担当するものだと思っていたのですが、実際に入ってみるとECU開発や組み込み開発はやらないポジションでした。でも、逆にそれがすごく勉強になって良かったと思っています。今まで全く触ってこなかった知識やツールを知ることができ、今までの車載開発の経験を活かしながら、よりソフトウェアに近い領域の仕事をやれていると感じています。

組み込みからITインフラ開発へキャリアチェンジ。全てが勉強の毎日

――開発環境で言うと、前職は組み込み系でC言語やアセンブラなどローレベル寄りだったと思いますが、今はどのような領域を扱っていますか?

[渡邉氏]今はITシステムに近いところでITインフラ関連を担当していますので、OSのシェルスクリプトやバッチが中心です。全然知識領域が違うのでとても勉強になりました。組み込み系というところにこだわって可能性を狭めるよりも、例えばコネクテッドカーなど、「外部とつながる」ということがとても重要な要素だと思っているので、一足飛びに業務領域が変わったことで自分の中で混乱もありましたが、組み込みの知識も使いつつ、新たな領域の勉強もできて、幅広くキャリアの選択肢が開けていると実感しています。今振り返っても、すごく良い転職ができたと思っています。

――13年間電気系のエンジニアとして歩まれてきて、車載ユニットの組み込み開発でスキルを積まれ、その後全く未知の領域だったIT開発へと移られたことは簡単なことではなかったと思います。どのような気持ちで決心されたのか、また、転職を考えている人へのアドバイスなどをいただけますか?

[渡邉氏]そうですね、メカやハードウェアはとても成熟した技術領域なので、今後劇的に発展していくのは、ソフトウェアの方だろうと思っています。もちろんメカがないとソフトも動きませんから、どちらの領域で仕事がしたいのかは個人の考え方次第です。私としては、将来の自分のキャリアと市場性を考えて、より可能性の多い道を選択した、そういう考え方を選んだのだと思っています。

ですから、とにかく最初にいろいろなことを経験するべきだと思っています。前職でもさまざまな仕事をやらせていただいたことが、自分のキャリア形成につながっているわけですから、あまり会社の枠にとらわれず、いろいろなことに挑戦することが重要だと思います。今の会社に留まって一生懸命取り組むのも、異なる環境に挑戦するために外に出るのも、選択肢の一つですから、あまり制約があると考えずに、自由に挑戦することが大切なのではないでしょうか。

――ありがとうございます。現在の担当業務の中でやりがいに感じていること、逆に難しいと感じていることを教えてください。

[渡邉氏]今の仕事のやりがいは、知らないことばかりなので、とにかく一生懸命に知らないことを勉強して、実務を通してそれが生きた知識へと変わっていくことですね。

難しいところは、人付き合いでしょうか(笑)。業務上、さまざまな部署の人と連携する必要がありますが、考え方が合う人もいれば、合わない人もいます。その中でいかに成果を上げていくのかを考えなければならないので、そこが難しいところですね。

――最後にSCSKの制度や働き方で良いと感じた点や、今後の抱負などについて教えてください。

[渡邉氏]SCSKはリモートワークの制度が充実しているので、設備の面でも業務の面でもすごくやりやすいと感じています。会社もリモートワークを後押ししてくれるので、とてもありがたいです。

今後の抱負としては、まずは今の新しい技術領域でしっかりと知識と経験を付け、前職で培った知識と経験も生かしながら、さらに対応できる業務領域を広げていきたいと思います。

取材協力

SCSK株式会社



ライタープロフィール
後藤 銀河
アメショーの銀河(♂)をこよなく愛すライター兼編集者。エンジニアのバックグラウンドを生かし、国内外のニュース記事を中心に誰が読んでもわかりやすい文章を書けるよう、日々奮闘中。


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