鉄の海洋散布により二酸化炭素を除去する「海洋鉄肥沃化」技術

Graphic by Natalie Renier, ©Woods Hole Oceanographic Institution

気候変動への対策として、温室効果ガスの排出削減に取り組むだけでなく、すでに大気中に放出された二酸化炭素を除去する必要がある。海洋の炭素貯蔵能力は非常に高く、大気の50倍以上、陸上植物と土壌の合計の15~20倍に達するといわれているため、海洋による二酸化炭素除去(marine Carbon Dioxide Removal:mCDR)は気候変動対策に役立つ可能性がある。

mCDRにはさまざまな手法があるが、その中でも海洋鉄肥沃化(Ocean Iron Fertilization:OIF)は研究と実地試験の歴史が長い。これらの研究では、一部の海域に鉄を散布/添加することで、植物プランクトンの成長が促進されることが確認されている。海洋への鉄の添加により、大気中の大量の二酸化炭素を除去し、深海に貯蔵することが可能になるのだ。

しかし、これまでのOIFの研究では、炭素貯留の耐久性やmCDRとしての効果を定量化することは主目的になっていなかった。そこで、国際専門家グループ「Exploring Ocean Iron Solutions(ExOIS)」は、学術誌『Frontiers in Climate』に、OIFのmCDR手法としての潜在的可能性を評価するために必要なステップを投稿した。論文は2024年9月9日付で公開されている。

ExOISは、炭素隔離を定量化する指標として「centennial tonne(100年トン)」という指標を提案している。centennial tonneは、大気との接触から平均で少なくとも100年間隔離された炭素1000kgと定義されている。

また、科学的、技術的な観点からOIFを評価するために必要な5つの活動を論文中に提示した。5つの活動とは、(1)北東太平洋における現地調査、(2)地域、世界、現地調査のモデリング、(3)さまざまな鉄の形態および投与方法の試験、(4)モニタリング・報告・検証(MRV)と、生態系やその他の非炭素環境への影響を評価するMRV(eMRV)の推進、(5)自然科学の取り組みと歩調を合わせた社会科学およびガバナンスの推進だ。

ExOISは、OIFがmCDRの手法として有効であり、実際に利用できるかについて現地調査が必要だと述べている。現地調査は、従来のOIF研究と比較して、はるかに大規模で、長期間でなければならないと指摘する。また、OIFが責任をもって実施できるかについての議論には一般市民グループの関与も不可欠だと述べている。沿岸の権利保有者や地域社会がOIFをどのように考えているか調査し、彼らの意見や優先事項が、OIFのさらなる探査のあり方を形作るためのアイデアも提示している。

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