電子廃棄物を急速加熱でリサイクルする手法を考案――金属純度95%収率85%を達成

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アメリカ・ライス大学は2024年9月25日、同大学の研究チームが従来の金属リサイクル技術のようにエネルギーや酸、溶媒を大量に消費したり、有害な廃棄物を流出して環境負荷を増大させることなく、電子機器廃棄物から有用な金属を効率的に回収する手法を開発したと発表した。

フラッシュジュール加熱(FJH)により、電子機器廃棄物を極めて高い温度に急速加熱して金属を塩素化し、塩素化金属の気化温度の違いにより金属を選択的に分離するものである。廃棄されたコンデンサやLED、導電性フィルムから、それぞれタンタルやガリウム、インジウムを、純度95%以上、および歩留まり85%以上で回収することに成功している。

電子機器に多く使われている稀少金属のリサイクルは、世界的なサプライチェーンの不安定化に伴う供給不足の観点から、重要な課題になっている。新しい鉱山などの資源開発は、原料鉱石を採掘するにあたり森林伐採や水質汚染、温室効果ガス排出など、環境破壊に関する深刻な問題を生じる。一方、従来から行われている湿式精錬による金属リサイクル技術は、大量の酸や溶媒を必要とするとともに、有害な廃棄物の流出が避けられない。また、高温加熱炉による溶融精錬による金属リサイクル技術は、大量のエネルギーを必要とし、金属の分離における選択性に乏しい問題もある。

研究チームは、パルス電流による急速加熱を特徴としたFJHの研究を実施し、これまでにプラスチック廃棄物から水素ガスとグラフェンを高収率で分離抽出することに成功している。さらに、FJHを活用して従来技術の問題点を解決できる新しい金属リサイクル技術の開発に挑戦した。

電子機器廃棄物を塩素ガスフロー雰囲気でプログラム化されたFJHを用い、2400℃までの高温に正確に制御して、103℃/sに至る加熱速度で急速加熱して金属を塩素化し、塩素化合物の生成自由エネルギーの違いを利用して選択的に分離するプロセスを考案した。この手法により、コンデンサからタンタルを、廃棄LEDからガリウムを、太陽電池導電性フィルムからインジウムを効率的に分離できることを確認した。そして反応条件を正確に制御することによって、95%以上の純度および85%以上の歩留まりを達成することに成功した。「この手法を適用して、廃棄物から他の戦略金属を回収することにもチャレンジしている」と研究チームは語り、リチウムやレアアースについても抽出できる可能性があると期待している。

「開発プロセスは、有用金属や戦略金属物資の不足の問題を解決するとともに、大量のエネルギーや酸、溶媒を消費せず、また有害な廃棄物を流出して環境負荷を増大させず、さらに操業コストや温室効果ガス排出の顕著な削減をもたらして、持続可能性や経済性、選択性、効率性の高いリサイクルを実現できる」と研究チームは説明する。

研究成果は『Nature Chemical Engineering』誌に公開されている。

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