- 2024-11-8
- 製品ニュース, 電気・電子系
- CBMM, LFP電池, NTO負極, NTO負極電池, ニオブチタン酸化物, リチウムイオン電池, リン酸鉄リチウムイオン電池, 双日, 導電ネットワーク, 東芝, 超急速充電, 電極製造技術
東芝は2024年11月6日、負極にニオブチタン酸化物(NTO)を用いて、リン酸鉄リチウムイオン電池(LFP電池)と同等の体積エネルギー密度を持ちながら、超急速充電できる長寿命性能を備えたリチウムイオン電池を発表した。ナノレベルの導電剤をNTO粒子の表面に均一に分散させ、粒子間に強固な導電ネットワークを形成する電極製造技術を開発し、エネルギー密度と寿命を向上させた。LFP電池の約10倍以上の回数で超急速充電でき、バスやトラックなどの大型商用車に適している。
商用車の稼働率の向上には、充電効率と充電1回あたりの航続距離の確保が必要だが、充電効率を高めるには超急速充電と長寿命性能が重要になる。LFP電池は、自家用電気自動車に広く用いられているが、商用電気自動車に適用するには、超急速充電とより高い長寿命性能が求められる。また、厳しい外気温条件の中での運行が多いことから、搭載する電池には高い耐久性が求められる。
NTO負極を用いた電池は、急速充電時に電流値を制御しなくても安全な超急速充電ができ、充放電を繰り返しても劣化が少ない長寿命性を有する。また、低温~高温の環境下でも安定して利用可能だ。そこで同社は、NTO負極電池を開発した。
同社が開発した電極製造技術は、わずかな導電剤で導電ネットワークを形成できるため、エネルギー密度と寿命を向上したことに加え、高安全性を維持した状態で高い入出力性能を実現できる。この技術を適用した容量50Ahの大型電池セルを用い、循環バスの運行を模擬した超急速充電と放電を繰り返すサイクル試験を実施した結果、7000サイクル後でも93%以上の容量を維持することを実証した。超急速充電サイクルで使用できる回数は、1万5000回以上と推定される。
また、超急速充電が-30℃から60℃の過酷な環境下でもできる。リチウムの析出が原理的に起こらないことから、発煙や発火のリスクが極めて低く、低温~高温の環境下でも高い信頼性を有し、安全に利用できる。開発した電池は、繰り返し超急速充電ができるため、電池搭載量を減らせることに加え、長寿命であるため、電池交換の必要性を大幅に減らせる。
同社は2024年6月からCBMM、双日と実施している実証実験を通じて、NTOを用いた次世代リチウムイオン電池の特性、車両運行データを収集し、今後商業化に向けた取り組みを進めていく。