酸素貯蔵材料の高速酸素脱離反応を可視化 東京工業大学、高輝度光科学研究センター、京都工芸繊維大学

東京工業大学は2023年5月2日、同大学や高輝度光科学研究センター、京都工芸繊維大学の研究グループが、酸素貯蔵材料の高速酸素脱離反応を可視化したと発表した。機能性材料の設計指針の構築や反応最適化に寄与することが期待される。

層状ペロブスカイト鉄酸化物Sr3Fe2O7-δは、自動車の排ガス浄化などに利用される酸素貯蔵材料として有望視されている。

同物質は、ガス雰囲気制御により大量の酸素を高速で脱挿入できる性質を有する。一方で、その反応がどのような中間体を経て進むのかは、これまで判明していなかった。

層状ペロブスカイト鉄酸化物Sr3Fe2O7-δが、水素雰囲気や酸素雰囲気で酸素を脱挿入する様子。赤い球は酸素原子を示している。

同研究グループは今回、大型放射光施設「SPring-8」のビームライン「BL02B2」および「BL36XU」での放射光X線回折装置を用いた。Sr3Fe2O7-δの高速な酸素脱離反応を100ミリ秒間隔で連続撮影し、中間状態の構造を可視化している。

測定では、ガス雰囲気を制御できる装置と粉末試料を導入したガラス管とを接続した。真空雰囲気中で試料を500℃に熱し、測定開始から3秒後に水素ガスを導入。100ミリ秒ごとの試料の構造の変化を追跡した。

この結果、試料表面に微量のパラジウムを担持することで反応が急加速し、数秒で反応が完了することが判明した。通常の試料では、この条件での酸素脱離反応完了に30秒程度を要する。

また、反応の速度が増すことで、反応の経路が大きく変化することも判明した。パラジウムを担持した試料において反応が高速化することで、酸素欠陥が無秩序に分布する動的な中間状態が存在することが確認された。

冒頭の画像は、表面修飾がある場合とない場合で酸素脱離反応の経路が異なる様子を示したものだ。無担持試料では確認できなかった現象で、同発表によると世界初の発見だという。

また、ガス反応系の時分割X線回折測定では、今回初めてサブ秒オーダー(瞬きの速度)の連続撮影に成功した。

今回の実験結果は、新規酸素貯蔵材料の設計指針の構築に加えて、さまざまな革新的な機能性材料の開発に向けた各種反応の最適化や物質の構造設計に寄与することが期待される。

関連情報

高速酸素脱離反応の可視化 材料設計指針の構築に貢献 | 東工大ニュース | 東京工業大学

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