住友電気工業は2024年11月28日、極薄および高耐圧の絶縁コーティングを施した圧粉磁心の量産を開始したと発表した。固定子に巻く銅線のターン数が約14%増加し、コイルの熱も効率よく放熱できることから、アキシャルギャップモーターの高出力化が可能になる。
開発した圧粉磁心には、膜厚40μmと極薄で、絶縁耐圧5kVの高耐圧絶縁コーティングが施されており、銅線を巻ける空間(スロットスペース)を広く確保した。また、銅線の熱を、薄い絶縁塗装を通じて圧粉磁心へ素早く放散し、コイルの温度上昇を大幅に抑制する。
近年、モーターの軽薄化および高性能化への要望の高まりから、従来のモーター(ラジアルギャップモーター)の基本構造を変え、軽薄化を実現しつつ出力密度を高めたアキシャルギャップモーターが注目されている。同社の圧粉磁心(FMCMシリーズ)は、高い三次元形状自由度を持ちながら、優れた軟磁気特性を発揮するため、アキシャルギャップモーターの固定子用の磁心(ステータコア)に適している。
モーターの高性能化には、固定子に巻く銅線のターン数を増加させたり、銅線への通電によって発生したコイルの熱を効率よく放熱したりといった手法が使われるが、同社はターン数の増加と効率的な放熱の両立を図った。
一般的には、固定子の絶縁のために絶縁紙や樹脂ボビンなどを用いるが、これが不要となるため、関連する設備投資も削減できる。