高速/高効率で透明なウルトラワイドバンドギャップ型次世代半導体の開発

Credit: Kalie Pluchel/University of Minnesota

米ミネソタ大学の研究チームが、次世代のパワーエレクトロニクスや光電子デバイスに適用できる、高速/高効率で透明な半導体材料を開発した。ウルトラワイドバンドギャップ型電子構造を持つSrSnO3の薄膜ヘテロ積層により、高い導電性とともに可視光線および紫外線の両方に対して高い透明性を実現したものである。高電圧や高温度において高性能を示すとともに頑丈で耐久性があり、過酷な環境下でも作動する次世代型のハイパワーエレクトロニクスや深紫外線領域の光電子デバイスの開発に、新たな途を切り拓くと期待している。研究成果が、2024年11月1日に『Science Advances』誌に公開されている。

今日、半導体はスマホから医療デバイスまでほとんど全てのエレクトロニクスを動かしているが、新たな半導体材料分野として「ウルトラワイドバンドギャップ(UWBG:Ultra-Wide Band Gap)型」と呼ばれる半導体材料が注目されている。ワイドバンドギャップ(WBG)材料では、半導体の価電子帯上端と伝導体下端の間のエネルギー差であるバンドギャップが従来のシリコンの2倍以上に大きく、発光ダイオードなどの光半導体、液晶ディスプレーに使われる透明電極のほかに低損失パワーデバイスなどに応用されている。その中でも特にバンドギャップが大きいUWBG材料は、より高い電圧や温度、周波数での動作が可能であるとともに、原子間結合が強く頑丈で耐久性があることが知られており、酸化ガリウムやダイヤモンド、窒化アルミニウムなどの研究が進められている。300℃以上の高温や、1000V以上の高電圧における作動が必要な大電力分野や電力グリッド、エネルギー変換分野など厳しい環境に向けた、耐久性のあるデバイス開発に核心的な役割を果たすと期待されている。

研究チームは、新しいUWBG材料系としてSrSnO3に着目し、薄膜ヘテロ積層構造SrSnO3/La:SrSnO3/GdScO3 (110)を創成した。薄膜積層の実験と詳細な電子顕微鏡観察を繰り返して、材料中の欠陥を排除することに注力し、欠陥のない積層構造を得ることに成功し、高い導電性を発揮できることを明らかにした。1018~1020 cm-3の電荷密度とともに、室温において40~140cm2V-1s-1の電荷移動度を得ることを示した。さらに原子レベルの薄膜構造により、波長300nmの深紫外線に対して85%の光学的透明性を示すことも確認した。

「この研究によるブレークスルーは、高い導電性と透明性を両立する材料に関するゲームチェンジャーとなり、長年に渡り深紫外線デバイスの性能にとって障害となっていた限界を克服したことだ。最も過酷な環境において作動するハイパワーエレクトロニクスや深紫外光電子デバイスを革新する道を拓いた」と、研究チームは語る。AIやデジタル社会、量子コンピューターなど新技術が急速に発展し、高性能で強力な半導体のニーズが高まるなかで、より高速かつ高効率で耐久性の高いデバイスを開発するための有望なソリューションを提供できると期待している。

関連情報

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る