- 2025-1-6
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- Aftershock II, Civilian Space eXploration Team(CSXT), Traveler IV, USC Rocket Propulsion Lab(USCRPL), アマチュアロケット, カーマンライン, チタンコーティングフィン, 保護塗装システム, 南カリフォルニア大学(USC), 固体ロケットモーター, 学生運営団体, 学術, 陽極酸化(アノード酸化)
南カリフォルニア大学(USC)は2024年11月15日、学生運営団体USC Rocket Propulsion Lab(USCRPL)が設計/製造した最新ロケット「Aftershock II」を打ち上げ、アマチュアロケットによる最大高度の世界記録を更新したと発表した。
USCRPLは2005年に設立された団体で、2019年に打ち上げたロケット「Traveler IV」は、大学生が設計/製造したロケットとしては初めて、地球の大気圏と宇宙空間との境目である海抜高度100kmのカーマンラインを通過し、高度約104kmに到達することに成功した。
それ以来、USCRPLは自分たちの記録を打ち破るべく努力し、アマチュアロケットの高度世界記録に挑戦し続けている。2024年までの高度世界記録は、民間団体Civilian Space eXploration Team(CSXT)が2004年に樹立した約116kmだった。
USCRPLは、2024年10月20日に米ネバダ州ブラックロック砂漠のロケット発射場でAftershock IIを打ち上げた。速度は秒速約1.6kmに達し、高度約143kmに到達してCSXTの記録を約27km上回った。
Aftershock IIは全長約4m、直径約20cm、重量約150kgと、比較的軽量なロケットだ。新しいアビオニクスユニットを搭載し、安全性とデータ統合を改善している。学生が打ち上げたロケットの中で最も強力な固体ロケットモーターを搭載している。アマチュアが作製した複合材ケースのモーターとしては最も強力なものだ。
また、極超音速飛行に耐えられるよう、チタンコーティングフィンと新しい塗装を含む熱保護システムを採用している。USCRPLが開発した保護塗装システムは完璧に機能し、ロケットはほぼ無傷で帰還できた。さらに、これまではカーボンむき出し状態だったフィン縁をチタン製の前縁に変更している。チタンはフィンがぼろぼろになるのを防いだだけでなく、飛行中の高熱で陽極酸化(アノード酸化)により青く変色したことで、ロケットが極限状態に耐えたことを実証した。
また、学生チームがゼロから設計し、作製したカスタム設計のコンピューターシステムと回路基板も搭載しており、作動中にデータの統合ができるようになっている。これによって、飛行中のロケットの位置追跡やデータ収集、降下時のロケット回収が可能となった。