酸化セリウムを使った高性能熱スイッチを開発――熱伝導率切り替え幅が倍増 北海道大学

北海道大学は2025年1月6日、豊富に存在する酸化セリウムを使用して、従来の熱スイッチより熱伝導率切り替え幅を2倍以上にした、高性能熱スイッチを開発したと発表した。

近年、熱制御技術の1つである熱トランジスタ(熱スイッチ)が注目されている。熱スイッチは熱伝導率を電気的に切り替えることができるもので、これが実現すると、熱のコントラストで情報を表示する「熱ディスプレイ」のような新しい技術に利用できる。同大学ではこれまで高性能な全固体熱スイッチを開発してきたが、コバルトやニッケルなどの希少金属を活性層の材料にする必要があった。

今回の研究では、活性層材料として酸化セリウムを採用した。酸化セリウムはガラスの磨き粉などとして市販されており、比較的豊富に存在し、安価なことが特徴だ。

実際に酸化セリウムを活性層とする全固体熱スイッチを作製して、空気中、280℃に加熱した状態で通電した。電気化学的にオン状態(酸化状態)とオフ状態(還元状態)に切り替えて、熱伝導率の変化を調べた。その結果、最も還元された状態(オフ状態)の熱伝導率が約2.2W/mK、酸化状態(オン状態)の熱伝導率が12.5W/mKとなった。オン状態とオフ状態の熱伝導率比は5.8で、切り替え幅は10.3W/mKとなり、従来のSrCoOxやLaNiOx薄膜を活性層とする熱スイッチの熱伝導率切り替え幅の2倍以上となった。また、酸化セリウム熱スイッチは非常に安定して動作することも分かった。

今回の研究結果は熱制御デバイスの実用化に向けた開発に貢献するもので、特許を出願済みだ。今後、微細構造の制御による性能向上や、熱の伝わり方を赤外線カメラで可視化する熱ディスプレイの試作などに取り組む。

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新着情報: ありふれた材料で超高性能熱スイッチを実現~熱制御デバイス実用化に向けた開発を加速~(電子科学研究所 教授 太田裕道)

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