- 2025-1-23
- 技術ニュース, 機械系, 航空機
- CFRP, アスペクト比, 上智大学, 上智大学理工学部, 主翼, 多目的最適化フレームワーク, 東北大学, 構造性能, 構造重量, 炭素繊維強化プラスチック, 研究, 空力性能, 空気抵抗, 航空機材料, 航空機設計, 複合材主翼
上智大学は2025年1月22日、同大学理工学部と東北大学の研究チームが、複合材主翼の空気抵抗と構造重量の双方を低減する、「多目的最適化フレームワーク」を構築したと発表した。空気抵抗と構造重量をバランスよく低減できる主翼形状を数値的に明らかにし、さらに、既存の線形解析にのみ基づく設計を採用すると、予想よりも大きな力が主翼にかかり、危険な設計となりうることがわかった。
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、炭素繊維と樹脂を組み合わせた複雑な複合材料で、軽くて強く、近年は航空機材料として広く使われている。従来の金属製航空機では難しい高いアスペクト比の主翼を採用でき、空気抵抗を下げられるが、高アスペクト比で細長い主翼は大きくたわむため、通常の線形数値解析を用いた変形予測では主翼の変形を正確に捉えられなかった。
研究チームは、巡航時に平衡状態となる空気力と構造変形を予測し、かつ主翼が破壊しないよう構造部材の寸法を調整する数値解析法を基盤に、遺伝的アルゴリズムによる主翼平面形の多目的最適化手法を組み合わせ、空力性能と構造性能を最適化した。
特に多目的最適化は、空気抵抗と構造重量の最小化を目的関数とし、アスペクト比の高い主翼が空気抵抗を低減する一方で、構造重量は増大するといった、トレードオフ傾向を数値的に再現できることを示した。
また、アスペクト比の異なる最適化翼では、正確に大変形状態を予測できる幾何学的非線形解析を取り入れた。これにより、通常の線形解析による設計時よりわずかに構造重量が増加し、主翼変形量も増加することがわかった。
このような違いは特に、高いアスペクト比の翼ほど大きくなる。主翼上下面の板厚分布に変化が生じることもわかった。今回、世界で初めて、さまざまな形状の複合材主翼で、構造設計に対する幾何学的非線形解析の効果が詳細に確かめられた。
研究の成果は、航空機設計のデジタルツインの基盤を強化するもので、次世代航空機の開発期間短縮に貢献する。また、従来にない形態の航空機(水素・アンモニア推進などを含む)の設計支援へも繋がることが期待される。