安定性が大幅に向上――ペロブスカイト太陽電池向け新素材開発 東大

ペロブスカイト太陽電池の動作原理と「有機・無機ハイブリッド正孔輸送材料:BDPSO」の特徴

科学技術振興機構は2018年4月9日、東京大学の研究グループが、安定性を大幅に向上させたペロブスカイト太陽電池向け新素材を開発したと発表した。

ペロブスカイト太陽電池は、印刷で作製できるため製造コストの大幅削減が可能な上、近年は結晶シリコン太陽電池を凌ぐ高い光電変換効率を達成していることもあり、注目を集めている。しかし、その安定性に大きな課題があった。

今回開発されたのは、従来正孔輸送材料に用いられてきた「PEDOT:PSS」(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリエチレンスルホン酸からなる水溶性導電性高分子材料)に替わる新たな正孔輸送材料「BDPSO」(ジソジュームベンゾジピロールスルフォネート)。BDPSOは、高活性有機低分子と安定性に優れる無機塩部分を併せ持つ「有機、無機ハイブリッド正孔輸送材料」だ。

従来のPEDOT:PSSを用いた素子では、空気中保存下で急速に性能が劣化していた。一方BDPSOは、暗所保存では1000時間を経ても性能が劣化せず、35℃連続光照射下においても1300時間以上にわたり初期性能の90%を維持するなど、従来の素材と比較して高い安定性を持つ。BDPSOは中性で非吸湿性であるため、隣り合う光吸収層や電極の腐蝕を抑制し、素子の寿命が伸びた。

また、BDPSOを正孔輸送層に用いると、HOMO(最高被占軌道)エネルギー準位とペロブスカイトの価電子帯順位の配置を適切に調整できることから、荷電抽出の高速化と光電流の増加が可能になる。

今後は、引き続き新規材料の開発を行うことで、ペロブスカイト太陽電池の早期実用化を目指すという。

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