- 2023-9-5
- ニュース, 化学・素材系, 技術ニュース
- チタン酸バリウム, ナノキューブ単層膜, 交互積層, 多層グラフェン膜, 産業技術総合研究所, 産総研, 研究, 積層セラミックコンデンサー, 誘電体材料, 誘電層, 電極層
産業技術総合研究所(産総研)は2023年9月1日、誘電体材料のチタン酸バリウム(BTO)のナノキュープ単層膜と多層グラフェン膜の交互積層プロセス技術を開発したと発表した。
小型電子機器の重要な部品の1つである積層セラミックコンデンサー(MLCC)は、機器自体の高性能化が進むに従い、さらに小型化が求められている。MLCCは、誘電層と電極層が交互に積層した構造を持っており、これまでさまざまな材料の組み合わせによる薄層化や積層化が研究されてきた。
しかし、従来の原料粉末や積層プロセスでの薄層化は限界に近づきつつあり、誘電層と電極層をナノスケールの厚みに薄層化する、新たな積層プロセス技術の開発が課題となっていた。
今回の研究では、二次元炭素材料であるグラフェンのすぐれた導電性に着目。電極としてBTOナノキューブ単層膜と組み合わせることで、電極層と誘電層の極薄の交互積層構造を作製する方法を開発した。
産総研は以前にBTOナノキューブを二次元的に規則配列させた厚み約20nmの単層膜を作製する成膜技術を開発。今回この技術によって作成したBTOナノキュープ単層膜を、下部電極基板に転写。その上に厚さ2~3nmのシート状の多層グラフェンを転写する工程を交互に繰り返すことで、極めて薄い積層構造の作製を可能にした。
今回開発した技術は、MLCC内部の誘電層と電極層の交互積層構造を飛躍的に薄層化するための基盤技術として期待できるという。今後、作製した積層構造コンデンサーの性能向上のため、熱処理プロセスの最適化や、量産化プロセスの開発に取り組む。